長谷川留美子次なる目標は、日本公演を含むアジアツアー。イタリアから新進気鋭の女性オペラ・ディレクターを招聘し、《蝶々夫人》を公演予定。ご期待ください人 ニック・ミュニを迎えることができた。長谷川は照明の設置などにも立ち会った。人に委ねることは危険だと感じていた。予想どおり、衝突も生まれる。PRのためにあるサイトとの契約、ダイレクトメールとの契約がスタッフから持ち込まれる。長谷川はすぐにそのサイトのオープン率、クリック率、ダイレクトメールの反応の割合を調べ上げる。結果は「NO」。それをそのまま伝えた。ところが、スタッフらは反発。険悪なムードが流れる。長谷川も当初、怒っていた。数字を判断の基準にするのはビジネスの世界では当たり前。なぜそんなことも分からないのか、と。しかし、長谷川は頭を冷やす。怒りに怒りで返せば、事態は泥沼になることを知っていたからだ。1日の間をおいて長谷川は担当者に頭を下げる。「私がPRの方針、ビジョンを伝えていなかったことが根本的な原因だ」、と。一事が万事、芸術の世界に生きる人間とビジネスを叩き込まれた人間とのギャップを痛感する日々だった。しかし、長谷川には信念があった。寄付に頼らない、投資を呼び込むような公演を見せること、そうしたオペラをつくり上げなければオペラは死に絶える。それを阻止するのが自分の、そして『MORETHANMUSICAL』に負託された使命だと。 長谷川は芸術監督・ミュニとともにアジアの若き才能を発掘していく。10月末から第3回公演、新たなコンセプトの《トスカ》が始まる。アジアの若き才能が躍動する《トスカ》||アジア発の新たなうねりに世界は注目し始めている。no.はせがわ るみこ|『モアザンミュージカル リミテッド』ファウンダー。早稲田大学法学部を卒業後、ゴールドマン・サックス証券パートナー・マネージングディレクターを経て、2016年、香港で、コンサイスなオフ・ブロードウェイスタイルのオペラを提供するカンパニーを設立。17年6月、初公演の《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》が、パフォーミングアートの拠点のひとつ『ArtisTree(アーティスツリー)』のオープニングプログラムに招待され、成功を収める。同年12月に再公演。18年10月に《トスカ》、19年には《蝶々夫人》を公演予定。2018年からニューヨークのメトロポリタンオペラ、インターナショナルカウンシルのメンバーに就任。長谷川さんと芸術監督のニック・ミュニ氏。SignatureInterview86Rumiko HASEGAWA15The Kiss of Toscaモアザンミュージカルのオペラ2作目、プッチーニ《トスカ》の新プロダクション「ザ・キス・オブ・トスカ」公演日程:2018年10月30日~11月3日 会場:The Annex[香港] www.morethanmusical.org
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