SIGNATURE 2018 10月号
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CSignatureはしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 会期 : 2018年9月24日(月・休)まで会場 : 上野の森美術館 [東京・上野公園]開室時間 : 10:00~17:00※入場は閉場30分前まで※会期中無休 入場無料お問い合わせ 03-3833-4191(上野の森美術館)展覧会ウェブサイト http://www.kanazawa-it.ac.jp/shomotu/日本美術の冒険 第47回文・橋本麻里 たかが書物が世界を変えるとは大げさな、 と思われるかもしれない。 だがコペルニクス『天球の回転について』、 ケプラー『新天文学』、 ガリレイ『星界の報告』、 ニュートン『プリンキピア』、 デカルト『方法序説』、 ダーウィン『種の起源』……と書名を並べていけば、 なるほどまさに私たちが世界を見る眼差しを一変させてしまった、 研究や発見の集合体だとわかる。 「この世界の成り立ちを理解したい」という人間の根源的な欲求は、 宗教をつくり、 哲学を育み、 その中からやがて、 仮説の構築と観測による検証という、 近代科学の方法論が生まれてきた。 遡ればユークリッド『原論』、 アリストテレス『ギリシャ語による著作集』など、 古代ギリシャに始まる知の探究も含めて、 印刷という新しい技術が発明(この「情報革命」も近代科学の普及と進歩を後押しした)されてからの、 貴重な初版本約130冊を展示することで、 近代科学成立から現代へと至る自然科学の歴史を俯瞰するのが、 この展覧会だ。 「科学史」であるのはもちろん、 それまでの写本とは比較にならないほど多くの人たちが情報を共有、 交換することができるようになった、 印刷・製本という技術、 デザインの歴史をたどる旅でもある。 また同時期に、 丸善・丸の内本店で「第30回慶應義塾大学図書館貴重書展示会 インキュナブラの時代─慶應義塾の西洋初期印刷本コレクションとその広がり─」(10月3日~9日)、 印刷博物館(東京都文京区水道)で「天文学と印刷 新たな世界像を求めて」(10月20日~2019年1月20日)が開催されるなど、 自然科学~人文科学の両分野にわたる、 「世界を変えた書物」を見ることができる。olumnText by Mari HASHIMOTO20[世界を変えた書物]展2世界を伝え、世界を変えた、書物という名の「知の森」Art

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