SIGNATURE 2018 10月号
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えんにべんえんもりみれいょういちしげ文・沢田眉香子 写真・水野克比古、水野秀比古釈迦の生涯における8つの重要な出来事(八相成道)にちなんで命名された「八相の庭」。枯山水庭園の南庭には、蓬莱神仙思想の「四仙島」を巨石で、渦巻く砂紋が「八海」を表し、西方には五山になぞらえた築山を配する。苔の緑と切石が鮮やかな対比を見せる市松模様の北庭。彫刻家イサム・ノグチはこの庭を「モンドリアン風の新しい角度の庭」と評した。紅葉のシーズンには、背景のカエデの朱色や黄金色が織りなす色彩が見どころ。 東福寺の開山(初代住職)・聖一国師(円爾弁円)は、宋時代の中国で修行した禅僧である。 「聖一国師は、中国から博多山笠、博多織、静岡茶の原種も伝えました。また、水車で製粉する機械の図面も持ち帰られ、製粉技術が全国各地に伝わったのです。私たちがいま、おうどん、お饅頭を食べられるのは、聖一国師のおかげでもあるのです(笑)。創建当時のお寺には、学問も文化も最先端のものがあったのです」 最先端と聞いて、私たちが東福寺に思い浮かべるのは、昭和の作庭家・重森三玲(1896〜1975年)が手がけた本坊庭園(国指定名勝)だろう。「永遠のモダン」と絶賛される、苔と切石で描いた北庭の市松模様は、寺の庭としてはあまりにも斬新だ。本坊庭園の美苔と切石で描かれた、本坊庭園の永遠のモダンしせいでんKyoto, Zen Gateway to Divine Colors of Autumnサツキの刈り込みと砂地を方形に区切り、市松模様に図案化した西庭。一里四方の田んぼを、井の字に区画した古代中国の井田制にちなみ、「井田市松」と呼ばれる。34八相の庭南庭北庭西庭

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