観光客で賑わう祇園・花見小路。そこからたった数本の道を隔てるだけで、昔ながらの静かな通りが現れる。そんな京都の懐の深さを感じさせる場所にあるのが、イタリアンレストラン『やまぐち』だ。オーナーシェフの山口正さんは『リストランテカノビアーノ』、祇園『リストランテティヴォリオベーネ』で料理長を務めた後、2011年にこの店をオープンした。料理、しつらえ、もてなしに「祇園らしさ」の流儀が行き届く。カウンターはたった6席、紹介者を介してのみ予約を受け付ける「一見さんお断り」もそのひとつ。「あえて間口を狭めることで、お客様とじっくり向き合い料理できますから」。その客が、席に着いた時から愉しみいちげん文・沢田眉香子 写真・高嶋克郎に待つのが、名物「近江牛フィレ肉の炭火焼」だ。「強いメインを出したくて考案したオリジナルの料理です。40日間熟成させた肉を、お客様の到着に合わせて、2時間かけてじっくり炭火で焼き、休ませ余熱で火を通し、を繰り返して、ローストビーフのようにしっとりと焼きあげます」。ダイナースクラブのイベントでは、前菜に「間人のセコガニの冷たいパスタ」が登場する。「カニは、ほぐし身をサラダのように、またはパスタソースに入れていただいても。食べる方がご自由に」。食通の客に〝お好み〞を委ねるプレゼンテーションだ。パスタは京都のイタリアンらしく昆布だしで茹でる。京都の素材と技に磨かれた料理を、この機会にご体験いただきたい。たいざやまぐち緩急自在の京イタリアン Kyoto, Zen Gateway to Divine Colors of Autumn40京都市東山区祇園町南側570-185電話075-708-718317:00~20:30(L.O.)完全紹介制、不定休「近江牛フィレ肉の炭火焼は、イタリアの薪で焼くステーキ、ビステッカフィオレンティーナの京都版でしょうか。鉄板焼きでもステーキでもない肉の焼き方を模索したのがこのスタイルです」。人数分のかたまり肉を焼き、目の前で切り分ける。ソースは醤油とみりんを煮詰めた和風テイスト。浜茹でにしたセコガニをサラダにした冷製パスタは、ドレッシングをカニ酢のように和えても、パスタソースにカニを入れても。やまぐち
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