SIGNATURE 2018 10月号
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すでにガンを恐れる時代ではないり、日本でもおよそ40万人の死者を出しました。そんな流行病も、抗生物質が発見され、不治の病ではなくなりました。エイズですら、克服しつつあります。さらに進んでCTスキャンやMRIといった、コンピューターの力を借りた技術の融合で体にメスを入れる前に診断ができるようになりました。今では遺伝子レベルの研究も進んでいますし、AI(人工知能)の導入で、さらに高度な医療が提供されるようになるでしょう。つまり私たちは、ガンや生活習慣病を早期発見できれば、相当な確率で治せる時代を生きています。ガンだからと恐れる必要がなくなっているのです。もちろん、膵臓ガンや胆管ガンなどタチの悪いものはあります。それでも、たとえば肺ガンならば、1センチ以下で見つけられればほとんど治癒します。乳ガンでも、最新治療では切除せずに患部を凍結させることでガン細胞を破壊して治すことができる。針一本で治療できるのです。年々増加している大腸ガンも、内視鏡検査を数年に一度やれば、よほど悪性でない限り、ガン細胞の成長もゆっくりで、命を落とす確率は低い。最近、肺ガンの見落としで亡くなった女性がいたことが報道されました。医師をかばうわけではありませんが、見落としは、後からは誰でも指摘できます。レントゲンだけで早期に見つけるのは難しいのです。ですから、ちょっとでも怪しければ、CTスキャンもかけるなど、チェックの網を狭めるしかないのです。その意味で、人間ドックを受けるならば、ていねいに検査を行い、医師の診断能力が高い病院を選んだほうがよいでしょう。亀田総合病院には、放射線のドクターが多数いますし、病理診断も国立大学などと密に連携をし、診断困難なケースについては積極的にディスカッションをして、見落としや誤診を防いでいます。生活習慣に関する啓蒙や、敷地内の禁煙なども早くから導入しています。ただ、日本で最高水準の予防医学を提供するには、費用がかかりますし、それを患者さまに転嫁できないことが頭の痛い問題ではあるのですが。当病院には、中国から多数の富裕層が人間ドックや診療のために来日しています。最近は遠方から当院を受診される患者さまの利便性向上のため、東京駅・銀座にほど近い京橋に、VIP対応も可能な人間ドックが受けられるクリニックをリニューアルしました。高いスキルを持つ専門医を中心とする高レベルの診断体制を導入し、鴨川や他の医療機関と密に連携させています。これからも患者さまに「ノー」と言わない医療を提供していきたいと考えています。医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 理事長かめだ たかあき|1952年、千葉県生まれ。日本医科大学医学部、順天堂大学医学部胸部外科教室大学院卒業(医学博士)。2004年、国立大学法人東京医科歯科大学医療担当理事を兼務(2008年退任、同大学客員教授に就任)。2008年、医療法人鉄蕉会 亀田総合病院理事長就任。    Takaaki KAMEDA67亀田隆明

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