いのだが、今回は少し好運であればと思い、物語の舞台に選んだ。私には珍しいことだ。それほど良い印象がある。 正確には四十五年前、私は広告会社の営業部に勤務し、同時に広告制作部にも属していた。 静岡のテレビ局から依頼があった。 「うちのテレビ局の存在の普及とイメージアップの仕事をして頂きたい」――えっ、テレビ局の宣伝? 静岡に出かけて事情を聞くと、まだ開局したばかりの新しいテレビ局で県民に認知されていないので、そのキャンペーンをしたい、と言われた。なるほど、そういうキャンペーンもあるのか。今でこそ東京のキィー局もチャリティーをしたりして局のイメージアップをしているが、当時、テレビ局は売り手市場でいくらでも広告が入り、キィー局は傲慢であった。そんな時代に新しいテレビ局の若いスタッフが情熱を持って説明してくれた。私も二十歳代で若く、毎週、静岡へ出かけスタッフと話し合った。夜は夜で居酒屋で語り合った。 「どうでしょうか。テレビはむこうから勝手に流れて来るという発想をやめて、お話したいのはテレビの方だというキャンペーンをしてみては?」 皆、首をひねったが、一枚のポスターを見せた。テレビ△△おはなししましょう。とコピーが大きくデザインされ、キャラクターが宙に浮いて笑っていた。 このキャンペーンが成功し、翌年の広告賞の特別賞を受賞し、何より子供たちが私が作った歌を口ずさんでくれた。〝♪空飛ぶ自転車、花いちもんめ、昨日も、今日も日曜日、北極、南極、その真ん中にテレビ局♪〞。きのうきょう8白糸の滝。上流の川から落水する滝と、溶岩断層からの湧水による無数の滝が並ぶ名瀑。 写真:エムオーフォトス/アフロNumber 118Shizuoka
元のページ ../index.html#4