ITIばもと 「SAKEイナースクラブ若手奨励賞は、宮城県『蔵王酒造』の大滝真也さんに授与された。酒蔵のある白石市は、仙南と呼ばれる仙台の南側に位置する。かつては伊達政宗の腹心だった片倉小十郎景綱が治めた土地だ。大滝さんは31歳。杜氏になって3年というフレッシュな造り手。まずは受賞酒「蔵王純米酒K」について聞いた。 「米は岩手などでメインに使われている『トヨニシキ』です。昔はこの米で大吟醸クラスの酒を造っていて、全国1位になったことも。それを3年前から改めて使っています。精米歩合65%で、冷や・常温・お燗と、どの温度帯でも米の香りが花開いて柔らかく美味しくなるよう仕上げました。受賞をきっかけに、さまざまにお声がけいただけて、ありがたいです」と、はにかむ。 大滝さんは白石で生まれ育ち、高COMPETON 2018」で、校卒業後に蔵王酒造に入社。20歳で酒造りのスタッフに加えられた。 「正直、当時は酒造りに興味がありませんでした(笑)。突然酒を造れと言われて、11月から3月まで休みなく働いて、楽しいという感覚はありませんでした。ですが、東日本大震災後に南部(岩手県)からいらした杉浦哲夫杜氏の下で、蔵の雰囲気が変わりました。杉浦さんは、各ポジションの人間に『自分で判断して、自分でやりなさい』と任せてくれました。酒質にダメージを与えるようなミスをしても『大丈夫だ』と笑っていました。でも夜中に、ひとり酛場(酒母室)で修復作業をしていらしたり……。一つ聞けば十の答えが返ってくる杉浦さんに教わるうちに酒造りが楽しくなったのです」 酒質もガラッと変わった。地元の名家が醸す酒とはいえ「蔵王の酒ならいらない」と、辛口の人も多かったそう。だが、杉浦氏が、後処理ま蔵王酒造 杜氏大滝真也左:白石市小下倉地区からの蔵王連峰の眺望。「蔵王」は蔵王山という一つの峰が存在するわけではなく、宮城県と山形県にまたがる連峰の総称。右:刈り取りの時期を迎えた美山錦の稲穂。寒暖差の大きい、山懐に抱かれた傾斜地の棚田が、良質な酒米を生むのだという。おおたき しんや|蔵王酒造杜氏。 1987年、 宮城県白石市生まれ。 18歳で蔵王酒造の門を叩く。 2012年から就任した杉浦哲夫杜氏の下、 酒造りを学ぶ。 15年には杜氏に抜擢され、 酒造年度「26BY」からは、 若手主導による新しいチャレンジ酒「Kシリーズ」に着手。 現在、 蔵元の渡邊毅一郎さんとともに酒質の向上と蔵の改革を進めている。6940歳以下の若手杜氏の支援を行うダ日本の食文化を応援します。蔵元渡邊毅一郎
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