SIGNATURE 2019 1&2月号
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は僕の芝居版には一切出てこないものだったんです。それに、コーラスたちが、能楽の謡や、ギリシャ劇のコロスと同じような役割で、あるときは金閣のこと、あるときは溝口の内面などを説明しながら、舞台上にずっと存在しているんです」 お経を迫力ある音響世界として、オペラの舞台の上に現出させること。それが黛の『金閣寺』の一番の音楽的特徴である。そのうえで亜門さんは原作のどういった点を生かそうとしたのだろう? 「もともとはベルリン・ドイツ・オペラのために作られたもので、ある意味ドイツ・オペラらしい感覚は強い。ざらついた凄みみたいなものが力強く押し寄せてくる。これでもかというくらいに。しかし、三島自身を考えたときに、彼が一番好きだったのはフランス文学です。ラディゲとかサドとか。その美意識||醜悪なものと、高貴で聖なるものの対比の感覚は、とてもフランス人に合うんじゃないかと。僕が三島のなかに共鳴するのはそこなんですよね。そういう感覚を、自分なりに入れ込んじゃおうと思ったんです」 三島由紀夫のフランス趣味を取り入れながら、黛特有の鬼気迫る音響世界を生かした舞台を作ること。それが、演出家・宮本亜門のオペラ『金閣寺』に対する判断だった。フランスでの色彩感あふれる舞台は、単なるスペクタクルではなく、内面的なオペラとして高く評価された。 いよいよ東京二期会による日本での舞台が近づいている。文学にも音楽にも演劇にも関心ある人にとって、必ず体験しておきたい上演になるはずだ。うたいTicket Information15オペラ全3幕 字幕付原語[ドイツ語]上演原作:三島由紀夫 指揮:マキシム・パスカル台本:クラウス・H・ヘンネベルク作曲:黛 敏郎/演出:宮本亜門配役(ダブルキャスト):溝口=宮本益光、与那城敬道詮和尚=志村文彦、畠山 茂女=嘉目真木子、冨平安希子 ほか合唱:二期会合唱団/管弦楽:東京交響楽団公演日時: 2019年2月22日(金)18:30開演23日(土)14:00開演 24日(日)14:00開演※開場は開演の60分前 上演予定時間:約2時間20分(休憩1回を含む)会場:東京文化会館 大ホール(東京・上野公園)料金(全席指定):S席 15,000円(税込)【ダイナースクラブ会員限定特典】 公演パンフレット付き (※パンフレット引換券はチケット送付時に同封されます)お申し込み ダイナースクラブ チケットサービスWEB予約 https://dnticket.jp/フリーダイヤル 0120-243-543 (月~金10:00~18:00 土・日・祝日休)※やむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。 あらかじめご了承ください。※出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更は お受けできません。 ※未就学児童のご入場不可。    ※お手元にダイナースクラブカードをご用意のうえ、お電話ください。※お申し込みに際しては92ページの注意事項も併せてご確認ください。オペラ『Le Pavillon d’Or / 金閣寺』フランス公演より。上:主人公・溝口とその分身。右上:女役・嘉目真木子は東京公演にも出演予定。下:斬新な色彩の舞台。 Photos:©Klara Beck東京二期会オペラ劇場フランス国立ラン歌劇場との共同制作金閣寺《新制作》オペラの面白みは国によって違います。だからあえて日本人の演出家だからという枠を外させてもらおうと。さまざまな国のスタッフと一緒につくり上げた新たなオペラなのです宮本亜門

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