3やSignature 神々しい鳥の化身と見紛うような、畢生の当たり役・孔雀の舞で人々を魅了してきたヤン・リーピン。 中国雲南省の少数民族出身で、 大自然を師に独自の舞踊スタイルを築いてきたユニークな経歴で、 「ワイルドな神秘の舞姫」のイメージをほしいままにしている。 が、 彼女の魅力は、 舞踊家としての自己表現にはとどまらない。 むしろ自分が踊ることよりも、 鋭い感性と哲学的な思索を結びつけ、 強烈な美意識によってビジュアル化する振り付け・演出のほうに、 自身の資質を見出しており、 精力的にドラマティックなオリジナル舞踊劇を発表、 いずれも高い評価を得ている。中国古代史上最もよく知られたエピソードのひとつ、 項羽と劉邦の世界を描く『覇王別姫～十面埋伏』は、 中でも最高傑作と言っていいと思う。 『覇王別姫』といえば、 チェン・カイコーみまがひっせいはおうべっきじゅうめんまいふく監督の映画『さらば、 わが愛／覇王別姫』がまず思い浮かぶところ。 同映画の劇中劇であり、 主人公たちの心象や行動にも重なるのは、 京劇の代表作『覇王別姫』だ。 つまりリーピンは、 中国では誰もが知る逸話であり、 伝統演劇の定番としても有名で、 さらに大ヒット映画がそれに輪をかけるようにイメージを確定させた歌舞劇に、 あえて新たなアプローチで挑んだということになる。 舞台の天井には、 キラキラと鈍い光を放つ魚影の群れのような、 無数のはさみが吊り下がっている。 その刃先の鋭さは、 今にも地上の人間たちを突き刺そうとする勢い。 殺るか殺られるか。 群雄割拠の渦中で覇権を争う西楚の項羽と漢の劉邦の置かれた、 苛烈な環境を暗示するかのようだ。 威厳ある武将の項羽と、 抜け目ない策士の劉邦によるアクロバティックな闘文・伊達なつめ（演劇ジャーナリスト）いのデュエットや、 双方の兵士たちの勇壮な群舞、 劉邦の右腕として暗躍する韓信のキャラクター・ダンスと、 ヴァラエティに富むシーンが続く。 さらに、 ミステリアスな裸身の男性ダンサーが、 そのまま妖艶な虞美人になってゆく姿は、 京劇の女方を彷彿させつつ、 京劇とはまったく異なるスタイルで独自の虞美人を現出させた、 リーピンのアイデアが冴え渡る名場面だ。 美術・衣裳に、 世界の名だたる振付家の作品を手がけているティム・イップを迎え、 音楽には、 中国古曲『十面埋伏』を超絶技巧の中国琵琶で生演奏するなど、 クリエイティブ・スタッフも盤石。 個性と実力を併せ持つ優れたダンサーたちがリーピンの美学を鮮やかに体現し、 ワイルドな神秘の舞姫はコレオグラファーとしてもずば抜けた才能の持ち主であることを、 観客に知らしめるだろう。olumnText by Natsume DATETicket Information21公演日時：2019年2月21日（木）19:00開演22日（金）14:00開演 23日（土）12:30／16:30開演 24日（日）12:30開演会場：Bunkamuraオーチャードホール料金：S席12,000円 （全席指定・税込）芸術監督・演出・振付：ヤン・リーピン出演：ヤン･リーピンカンパニー （※ヤン･リーピンは出演しません） 【ダイナースクラブ会員特別優待】 ＊良席保証（1階19列目以内) ※未就学児童入場不可。 ※演出上、開演後のご入場が制限される場合があります。※やむを得ない事情により演目・出演者が変更になる場合があります。 あらかじめご了承ください。※演目・出演者変更にともなうチケットの払い戻し、 公演日・券種の変更はお受けできません。 ※お手元にダイナースクラブカードをご用意のうえ、お電話ください。※お申し込みに際しては92ページの注意事項を併せてご確認ください。お申し込み ダイナースクラブ チケットサービスWEB予約 https://dnticket.jp/フリーダイヤル 0120-243-543 （月～金10:00～18:00 土・日・祝日休）Bunkamura 30周年記念ヤン・リーピンの覇王別姫～十面埋伏～Entertainment項羽と愛姫・虞美人の悲恋物語。息を呑むビジュアルと圧巻の舞で魅せる壮絶な舞台
元のページ ../index.html#17