SIGNATURE 2019 3月号
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ごえ 1876年、米国中部の地方都市シンシナティで初のプロ野球チームが産声を上げて以来、米国のプロ野球は着実に発展を遂げてきた。現在は、ナショナル・リーグとアメリカン・リーグが共同事業として本格的な運営を始めた1903年をメジャーリーグの創始年と位置付けており、その後、数々の事件や問題に直面しながらも、近年の市場規模は総額1兆円を超えると見込まれるほど成長してきた。 1990年代には2回にわたって球団拡張を実施し、1998年にアリゾナ・ダイヤモンドバックス、タンパベイ・デビルレイズ(現・レイズ)の2球団を加え、現行の30球団となった。2015年に就任したコミッショナーのロブ・マンフレッド氏は、将来的に球団増の意向を示しており、数年先には32球団にする計画も進められている。 昨季は、ボストン・レッドソックスが5年ぶり9回目の世界一に輝いた一方で、近年は「群雄割拠」の時代が続いている。というのも、ニューヨーク・ヤンキースが1998年から3連覇して以来、ワールドシリーズを連覇したチームは出ていない。チームによってうぶ戦力、資金力などの格差はあるものの、新人ドラフトが完全ウェーバー制のため、若手選手の育成次第でチーム力は急激に変化する。たとえ選手の総年俸が低くても、戦術、戦略次第ではプレーオフ争いに加わるチームも少なくない。裏を返せば、高額資金を投入し、有望選手を獲得しても勝てる保証はない。そこにメジャーリーグのおもしろみ、奥深さがあると言っていい。 メジャーリーグの最大の特徴といえば、やはりパワーとスピードだろう。時代によって、戦術面の流行、傾向は変遷してきたものの、根底に流れるパワー重視の傾向は変わっていない。特に、過去数年は、セイバーメトリクスなど細かいデータ、数字による分析がデジタル化されるようになったことで、さらに拍車がかかった。 2017年には、リーグ全体で過去最多を更新する計6105本塁打を記録した。禁止薬物「ステロイド(筋肉増強剤)」が全盛と言われた1998年の5064本から1000本以上も増加した。その半面、2018年には史上最多となる4万1207三振を記録。初めて3万個を突破した1998文・四竈 衛Text by Mamoru SHIKAMA知ることでより楽しい、メジャーリーグ物語

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