文・松本倫子 ロサンゼルスに隣接する高級住宅街・パサデナ。賑やかなダウンタウンから車を走らせてパサデナに入ると、静かな通り沿いに趣味のよい大きな館が姿を見せ始める。泰然としたその様子は、時間をかけて育まれてきた〝街の余裕〞を醸し出している。このパサデナに、名前は変えつつも100年以上の時間を刻んできた由緒正しきホテルがある。『ザ・ランガムハンティントンパサデナ』だ。 その長い歴史の中で、重要な役割を果たした人物がいる。1911年にオーナーとなった鉄道王でアートコレクターでもあったヘンリー・ハンティントンだ。彼は当時ロサンゼルスで活躍していた建築家に依頼して、オリジナルの建物を美しい冬のリゾートホテルとしてリノベーション、1920年代になるとカリフォルニアの温暖な冬の気候を求めて、東部や中西部から起業家たちがやってくるようになる。その後も著名作家やスポーツ選手、政治家『THEROYCE』は、ロサンゼルスでなどがこぞって訪れ、このホテルで冬を越すことが、当時の富裕層たちのステイタスとなった。 今でも彼らの面影がここには残っている。たとえば、紳士淑女が連日連夜ダンスに興じたボールルーム。天井や壁は当時の姿を残し、はるか昔、ここに流れたであろう弦楽器の音が聞こえてくるようだ。また、現在のホテルの正面とは反対側の入口は、かつてゲストが馬車で乗りつけたオリジナルのエントランス。緑の芝の庭越しに建物を眺めれば、今度は着飾ったゲストを乗せた馬車の軽快な車輪の音が……。 20世紀初頭のカリフォルニアの歴史が薫る夢の館。広大な館内には絵画があちこちに掛けられ、外にはジャパニーズガーデンがあり、プールやスパ施設も充実している。また、ステーキハウスもトップクラスのクオリティと評判だ。1泊だけではこのラグジュアリーとエレガンスはとても享受できない。メジャーリーグを満喫した後に連泊し、ゆっくりと羽を休めてみたいホテルだ。ある時はセレブリティのように、また、ある時は本格的なトーナメントコースでゴルフ三昧を。カリフォルニアならではの滞在は、目的に合わせたホテル選びで決まる。カリフォルニアらしいホテルの選択 1.かつては正面玄関だった、現在のホテルの反対側の景色。2.廊下の随所に設けられたソファとテーブル。ホテル散策に疲れたらここで一休みを。3.20世紀初頭の空気感を今なお残すボールルーム。4.1911~14年にかけて造られたというジャパニーズガーデン。1401 South Oak Knoll Avenue, Pasadena, CATEL:+1(626)568-3900http://www.langhamhotels.com/en/the-langham/pasadena/右:『THE ROYCE』のガラス張りのワインセラーには、高級ワインがずらりと並ぶ。ワインメーカーズ・ディナーが催されることもある。中と左:オーセンティックな設えのスイートルーム。1234 Text byRinko MATSUMOTOHuntington, Pasadenaザ・ランガム ハンティントン パサデナ今に伝えるThe Langham富豪たちの冬の館を
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