SIGNATURE 2019 3月号
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『Me Deau(メドゥ)』。津軽弁で「お外はトラ吹ン雪スくをほ入どっのた雪瞬景間色にで寄もせ、エらンれるホテルスタッフの歓迎の微笑みと、気遣いの言葉が、身体の冷えを瞬く間に遠ざけてくれる。ロビーの壁や柱を構成している巨木は、カナダ産の杉・レッドシダーと、アメリカ産の松・オレゴンパイン。それもほんの一部ではなく、惜しみなく使われている。 壁のあちらこちらには、青森県が生んだ稀代の版画家・棟方志功の作品が飾られている。このホテルの経営は、車で5分ほど離れた酸ヶ湯温泉が手掛けており、棟方は常連としてその湯に浸かってきた縁がある。そのため、多くの作品を提供し、現在はここに掲げられているという経緯を持つ。 ちなみに同ホテルの開業は平成の初め。しかしながらこの穏やかで落ち着いた空間は、もっと古くから醸成されてきたような風格が感じられる。 ロビー奥のメインレストランの名はいしい」を意味する「うめど」に由来する。そこでの料理はフレンチ。天井の高い伸びやかな設えで、ガラス窓も広い。眺める景色は、雪に耐えて気丈に枝を広げる木々と、真っ白い世界。『PLATTO(プラット)』へ。大きな暖十分な間隔を置いて配された各テーブルに陣取った宿泊客は、暖かな室内に守られながら食事を楽しめる。レストラン内も、客室も、温泉の熱を利用した床暖房が完備されているから、足元もぽかぽかと暖かい。和食がお好みという方には、別途、館内の『寒水』という食事処で、青森の旬の魚や肴に舌鼓を打てる。 夕食を終えたら、バー・ラウンジ炉の熱源となる材は、りんごの木。通常はこの手の材料としてはほとんど目にすることはない。さすがはりんご王国・青森にふさわしい。 酸ヶ湯温泉とは随時、自社の連絡バスで結ばれている。洋のリゾートと、和の名湯の両方を満喫できるのも『八甲田ホテル』ならではの寛ぎだ。しゃこみず八甲田ホテル木の香漂う、気品と風格ロビーの壁面に用いられているログは計363本。柱は65本。樹齢150~200年に及ぶもの。船とトラックで遠路はるばる、この標高945mの地に運び、釘を一切使わない工法で組み上げた。例年、雪が降り始めるのは10月下旬。完全に解け去るのは6月。支配人いわく、「当番制で泊まりのスタッフもおりますが、大半は市街地から通いです。冬の豪雪があればこそ、地表が顔を覗かせる時季、花や草木の芽吹く様などが一段と輝かしく感じます。私はこの地の冬も好きです」。八甲田ホテル住所:青森市荒川字南荒川山1-1TEL:017-728-2000https://www.hakkodahotel.co.jp*『八甲田ホテル』は、ダイナースクラブ ポイントアップ加盟店です。急き立てられない時間が流れる。食べる。飲む。湯に憩う。眠る。穏やかな円環。54

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