SIGNATURE 2019 4月号
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CSignature18はしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 国宝 曜変天目 (「稲葉天目」) 建窯 南宋時代(12~13世紀) 東京・静嘉堂文庫美術館蔵「日本刀の華 備前刀」会期 : 2019年4月13日(土)~6月2日(日)会場 : 静嘉堂文庫美術館    (www.seikado.or.jp)お問い合わせ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)会期 : 2019年4月13日(土)~6月9日(日)会場 : 奈良国立博物館 (www.narahaku.go.jp)お問い合わせ : 050-5542-8600 (ハローダイヤル)国宝 曜変天目 南宋時代(12~13世紀) 京都・大徳寺龍光院蔵春季特別展「大徳寺龍光院 国宝 曜変天目と破草鞋」会期 : 2019年3月21日(木・祝)~5月19日(日)会場 : MIHO MUSEUM (www.miho.or.jp)お問い合わせ : 0748-82-3411 (ミホミュージアム)特別展「国宝の殿堂 藤田美術館展」-曜変天目茶碗と仏教美術のきらめき-国宝 曜変天目茶碗 中国・南宋 大阪・藤田美術館蔵はそうあい※いずれかの展覧会チケットの半券を提示すると、 他の2館の入館料が割引になります。 詳細は各館ウェブサイトでご確認ください。日本美術の冒険 第52回世界で3碗しかない国宝「曜変天目」が同時期に公開される、千載一遇の春文・橋本麻里 闇の中に星が瞬くような茶碗。まさに掌の中の宇宙、という言葉に相応しい「曜変天目」3碗が、同時期に展覧会へ出展される。中国から舶載されたものだが、いずれも国宝に指定され、完品は日本にしか存在しない、このうえなく貴重な作品だ。「天目」の語は本来、中国浙江省臨安市北部の、天目山に由来する。元時代、ここに住した名僧の徳を慕う日中禅僧の交流の中で、鎌倉時代末期頃から、寺院の中で使われていた茶碗を「天目」と呼ぶように。その後室町時代に、足利将軍家が中国の優れた茶碗を蒐集。その種類を「曜変」「油滴」など7つに分類する中で、「天目」は評価の低い土の茶碗を指す語となり、さらに時代が下ると、黒釉の焼き物で、形状としては口が広く、漏斗状にすぼまって小さな高台を持つ茶碗の総称として用いられるようになっていった。 現在、日本で国宝に指定されているこくゆうじょうごふさわ陶磁器は14点。そのうち海外から請来された作品は9点で、中国陶磁8点、朝鮮陶磁1点。中国陶磁8点のうち5点までを、前述の天目(茶碗)が占めている。そして5点の天目の中でも、ずば抜けた存在感、知名度を誇るのが、この3点の「曜変天目」なのだ。 謎の多い茶碗だが、2009年、2017年と中国・杭州で、「曜変」と見なされる破片が出土し、南宋宮廷周辺で重く用いられていたこともわかってきた。中国では喫茶法の変化と共に黒釉茶碗の生産が衰え、なお高い評価の続く日本へ、中国から名品が運ばれた、と推測されている。日本でも歴史の中で、評価は浮き沈みしている。その本当の魅力はどこにあるのか、ぜひ自身の目で見極めてほしい。しょうらいolumnText by Mari Hashimoto2Art

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