SIGNATURE 2019 4月号
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第二章紺碧の絶景と断崖のネクロポリス古代都市を結ぶ街道の華たち 年間300日も晴れるという太陽に愛される街・アンタルヤは、リキアの街を結ぶ街道「リキアンウェイ」の東端となる。リキアンウェイはローマ時代、背後に迫る山に敷かれたアンタルヤからフェティエに点在する街を結ぶ約540キロにおよぶ古道だ。現在は、素晴らしい景色と豊かな自然を楽しめる人気のトレッキングルートとなっている。全行程を踏破するとなると1か月ほど要するが、部分的に歩くだけでも地中海を見下ろす眺望を存分に満喫できる。 その起点となるアンタルヤは、リキアと隣接する古代パンフィリアの主要都市だ。紀元130年、ローマ時代にハドリアヌス皇帝が訪れた際に建設された、コリント式円柱と美しく装飾された3つのアーチを配した門をくぐると、カレイチと呼ばれる旧市街だ。城壁に守られたカレイチでは、ローマ時代から残る石畳や塀で猫がのんびり寝そべり、曲がりくねった路地の両側にレストランやホテルなどが軒を並べている。中心に立つモスクは、ビザンチン時代に教会だった建物を改修したものだ。天高くそびえる美しいミナレットは、アンタルヤのアイコンとなっている。土産物屋を覗きながらそぞろ歩いていると、眩しい地中海を見渡す広場に出る。眼下には、海岸で太陽を満喫する人、ビリジアンブルーの海に浮かぶ人たちの姿が、乱反射する水面の中で34アンタルヤ右:アンタルヤ考古学博物館には近郊で発掘された、主にヘレニズム、ローマ時代の壮麗な彫刻や遺跡が展示されている。上:当時、ローマ帝国の一部であったこの地にハドリアヌス帝が建造した門が今も旧市街への入口として人々を迎えている。下2点:1キロメートル四方程度の小さな旧市街は、中世の趣をそのままに残す佇まいと、城壁から見渡す透明度の高い地中海が旅情を誘う。Antalya( Pamphylia )

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