SIGNATURE 2019 4月号
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輝いている。まさに地中海が持つイメージ通りの麗しい風景と、古代都市の面影を残す街並みが人々を魅了する、南トルコ屈指のリゾート地だ。 アンタルヤから車で南を目指して海岸線を走らせ、半島南部に位置するデムレに向かう。ここは古代ミュラと呼ばれたリキアの主要都市のひとつで、独自の通貨を持つほど繁栄した都市だった。遺跡保護区には、素人目に見ても重要文化財と思われる彫刻が施された石造のかけらがごろごろと無造作に散乱し、正面にそびえる垂直に切り立った崖の随所に家に似せた磨崖墓が彫られている。ネクロポリス「死者の街」と呼ばれるこの墓群の中には、神殿風の壮麗な装飾がされている墓もある。古代リキア人は死後の魂は天に昇ると信じており、墓は高い位置に造るほど魂が天に昇りやすいと考えていたそうだ。ネクロポリスのすぐ隣には、音響効果も考えて岩山の斜面に観客席を造った半円形劇場がある。ファサードは崩れ落ちているが、観客席は当時のまま残っている。斜陽が劇場に差し込み黄金色に染まる中、人気のない石段に腰を下ろすと、遠い昔の様子が目に浮かぶ。木々が風でざわめく音が歓声にも聞こえてくる。 ミュラにはもうひとつ大きな見どころがある。サンタクロースの由来になったともいわれている聖ニコラスの聖堂だ。聖ニコラスは生前にミュラで司教を務め、日ごろから貧者に助けを施したことから、贈り物をもたらす象徴となったと語られている。死後、その遺体はミュラに葬られ、ひとけ36かつてアンティフェロスと呼ばれたカシュ。街の中心部にはリキア人の大きなアーチ型石棺が鎮座する。美味しいシーフードレストランやブティックホテルが多く、近年は素朴で美しいリゾート地として欧米人を中心に人気急上昇中。Kas( Antiphellus )カシュ

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