聖ニコラスを記念する聖堂が建てられた。ビザンチン様式の聖堂は、整備が進められているが荒廃がひどく、色褪せたフレスコ画や剥がれたモザイクの床が一層リアルに往時の様子を伝えている。聖ニコラスのサルコファガス(石棺)も残っており、不朽体の安置に利用されたとみられる。しかし、11世紀にイタリア南部の船乗りに持ち去られ、現在その遺骨はバーリにある大聖堂に安置されている。 また、デムレの沖合に浮かぶケコヴァ島はかつて半島だったが、2世紀に起きた大地震で水没した。現在は沖合にいくつか頭を出している部分が島となり、当時の人が暮らしていた痕跡が見られる島や、海に浮かぶネクロポリス、聖ヨハネ騎士団の要塞跡をボートで巡るツアーが人気だ。もっとも旅行客にとっては、遺跡もさることながら透明な青い海で泳ぐことが主な目的だ。水温もちょうどよく穏やかな入江でのスイミングも、南トルコの旅には外せない時間だ。 リキアンウェイのちょうど中間地点に位置するカシュは、石畳の坂道に地中海の光を浴びて大きく育ったブーゲンビリアが咲き誇る港街。2階の張り出したテラスが印象的な家並みは、オスマン帝国時代の建築デザインの特徴といえる。1階はカフェや商店が軒を連ね、旅行者が散策を楽しむのにちょうどよい。そんなチャーミングな街の道端や広場、駐車場にリキア時代のアーチ型石棺が鎮座し、日常風景に溶け込んでいる。 カシュからさらに西へ60キロほど走った内陸の丘の上に立つクサントスは、リクサントスレトゥーンは女神・レトの名前にちなんでつけられた。ギリシャ神話のレト、アポロン、アルテミスに捧げられた神殿が並んでいた。37クサントスはリキア地方の中で最大かつ重要な都市だった。幾度となく侵略・破壊されてきたが、その度に再建され7世紀まで栄えた。遺跡内にはペルシャ、ヘレニズム、ローマ、ビザンチン時代の影響を受けた遺構が見られる。XanthosLetoonレトゥーン
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