2 日本美術の冒険第53回文・橋本麻里明治150年、皇室が守り伝えようとした華麗なる文化の粋を知るCSignature「明治150年記念 《入目籠形ボンボニエール》大正天皇即位礼大正4年(1915年)学習院大学史料館蔵(通期展示)《昭憲皇太后》丸木利陽撮影明治22年(1889年)学習院大学文学部史学科《菊桐文花瓶》昭憲皇太后遺品明治時代(19~20世紀)個人蔵※東京会場の2館を共にご観覧の方に特典があります、各ウェブサイトでご確認ください(会期にご注意ください)。はしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 会期 : 2019年5月10日(金)まで開館時間 : 10:00~17:00 (入館は16:30まで)休室日 : 月曜 (※4月29日、5月6日は開館、4月30日、5月7日休館)、 4月16日(展示替え)会場 : 住友コレクション 泉屋博古館分館 (東京都港区六本木1-5-1)お問い合わせ : 03-5777-8600 (ハローダイヤル)展覧会ウェブサイトhttp://hanahiraku-koshitsubunka.jp会期 : 2019年5月18日(土)まで開室時間 : 月~土10:00~17:00 (入館は16:50まで)(※特別開室日:4月14日(日)、30日(火)、5月2日(木))休室日 : 日曜・祝日、5月1日(水)会場 : 学習院大学史料館展示室 (北2号館1階) (東京都豊島区目白1-5-1 学習院大学内)*入場無料お問い合わせ : 03-3986-0221(学習院大学史料館)竹内久一《神鹿》大正元年(1912年)東京国立博物館蔵(通期展示)画像提供:東京国立博物館Image:TNM Image Archives18olumnText by Mari HASHIMOTO治150年を記念し、 学習院大学明の研究者が中心となって地道に準備していた展覧会が、 まさかのタイミングにはまってしまった。 3会場を巡回し終え、 東京展(2会場で実施)の会期中、 退位・即位の大典を迎えることに。 その展覧会で紹介されるのは、 明治維新後の日本の発展を、 文化の側面から支えた皇室のあり方と、 その影響下で生み出された美術工芸品の数々だ。 徳川幕府の瓦解と大名家の没落によって、 金工、 漆工、 染織など、 武家の表道具・奥道具に携わっていた職人たちは、 突然仕事を失った。 一方で富国強兵、 殖産興業を目指す明治新政府は、 外貨獲得や国威発揚のために、 軽工業──いわゆる工芸品の振興に努め、 内外の博覧会への出展や、 技術の保護・育成にも取り組んだ。 そこに江戸以来の高度な技術を持った職人たちが流れ込み、 工芸美術が高揚していく。 国賓をもてなす正餐のためにフランス料理用の食器を国産化し、 式典の衣装を洋装化して刺繡入りの華麗なドレスで装い、 綴織で再現された細密な花鳥画で宮殿を飾る。 そうして膨大な手間と熱意を費やした作品を、 明治の皇室は次々と購入、 宮中の儀式や御殿の装飾、 あるいは慶事の際の贈答品にと用いた。 会場に展示された華麗なローブ・デコルテ(中礼服)や、 精巧なボンボニエール(菓子器)、伊藤若冲『動植綵絵』を原画とする綴織など、 いわゆる「超絶技巧」の作品も少なくない。 その眩さに幻惑されそうになるが、 テーマは技巧そのものではなく、 きたる新時代の範となるかもしれない、 皇室が守り育ててきた文化とは何であったか、 という問いなのだ。つづれおりまばゆ特別展「明治150年記念 華ひらく皇室文化 ―明治宮廷を彩る技と美―」共催華ひらく皇室文化―明治宮廷を彩る技と美―」Art
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