中国の大都市の周辺には、必ずと言っていいほど農家楽がある。平たく言うと農家レストランだ。農家が副業的に料理を提供しているところもあれば、レジャー施設と一体になった農園の場合もあるが、いずれにせよ、都市に生活する人々が、自然豊かな郊外で新鮮な鶏や野菜を食べ、食後は茶を飲みながら麻雀卓を囲み、日がな一日ゆるりと過ごす場所が農家楽である。 土地と関わりが深い農家楽は、その風土によって名物が異なり、地域ごとに特徴のある料理が食べられる。もちろん、昆明ならきのこでキマリだ。市街地から車で2時間ほどの場所にあるきのこの産地、宜良県狗街鎮小哨村へ車を飛ばした。 山道の先に現れたのは、雲南省に多く住む少数民族・彝族の畢東さんが家族で営む小さな農家楽。家の裏手には粘土質の赤土の山があり、雑木林で採れたきのこ、自家飼いの鶏、豚を加工した干し肉などで料理をし、客人をもてなしてくれる。 ここでの最高のご馳走は、昆明で昆明人に愛されるきのこ尽くしの家庭料理。その最高峰は干巴だ(32ページ写真上)。干巴は、ケイトウの花に似た美しい造形もみごとだが、その芳香が素晴らしい。世の中のすべてのきのこを集めたような濃厚な香りを吸い込めば、これはもう、食べたくならない方がおかしい。聞けば、小哨村は干巴の名産地。毎年村内で優品のコンテストも行うほどで、まさに産地中の産地でビードンノンジャーラ採れたてきのこを味わう農家楽の愉悦38農家楽の裏手にそびえ立つのは、粘土質の赤土の山。木漏れ日が差し込む歩きやすい松林の中に、さまざまなきのこが自生する。写真は松林で育つ青頭菌で、ハツタケの仲間(右)。採ったきのこは背負い籠に入れて運ぶ(左)。自家飼いの豚で作った腊肉(干し肉)は農家楽のご馳走のひとつ(右)。トウモロコシの芯を燃料にした竈で調理する(中)。昆明人の一番のご馳走が干巴の和えもの。シンプルな味付けで、きのこの風味を引き立たせる(左)。イ
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