SIGNATURE 2019 5月号
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らず、ゴルフコースのメンテナンスができる人もいなかったからだ。それ以前にゴルフというスポーツがどういうものかを知る人がいなかったのである。 そのコルシカの旅の終りにパリに戻り、フランス人のゴルフについて調べるため本屋へ出かけてみるとゴルフ関係の本はほんのわずかしか置いていなかった。それでもゴルフコースは当時でフランス全土で一五〇近くあったが、そのうち18ホールのコースは三分の一もなかった。――そうか、ゴルフはフランス人の気質に合わないんだろう。 そのことをフランス人の友人に尋ねると、「英国人とアメリカ人が夢中になるスポーツが面白いわけがない。あの人たちは情緒というものを持ち合わせていないんだから」 少し言い過ぎにしても、フランス人の考えそうなゴルフ観に思えた。 フランスで初めてライダーカップが開催されたゴルフコースは〝ル・ゴルフ・ナショナル〞。フランスゴルフ協会(こんなものがあったとは)が全仏オープンのホームグラウンドとするべく一九八七年から三年がかりで造成した。八万人のギャラリーを収容できるらしい。二〇二四年のパリ・オリンピックのゴルフ競技のコースにもなるという。 私はこのコースを五年前にラウンドした。テレビのゴルフ番組だった。ハンディキャップ15という少年がキャディーをしてくれた。池の多いコースで、難コースに入る設計だった。――こんなコースをプレーしたらますますフランス人はゴルフが嫌いになるのと違うか? それが第一印象だった。旅先でこころに残った  言葉一二二ル・ゴルフ・ナショナル6Le Golf NationalNumber 122Le Golf Nationalパリ郊外・ギュイヤンクールの「ル・ゴルフ・ナショナル」16番ホール。 Photo by Michel Euler/AP/アフロ

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