日本三大車窓の眺めを味わう とりわけ4日目に用意された、鹿児島県霧島市の隼人駅から熊本県の八代駅を結ぶ肥薩線の車窓からの風景は、このコースの白眉ともいえるものだ。 数ある魅力的な車窓の中でも、SLが走ることでも知られる肥薩線の、矢岳駅付近のトンネル間で見ることのできる、霧島連山とえびの高原を一望する「矢岳越え」の絶景は、北海道・根室本線の旧線(1966年に廃線)の「狩勝峠越え」、長野県・篠ノ井線の「姨捨駅車窓」と並び、鉄道ファンの間で語り継がれる旧国鉄の「日本三大車窓」のひとつとされる。 矢岳駅手前の大畑駅は、急勾配対策のため、日本で唯一、ループ線内にスイッチバック構造を併せ持つ珍しい駅で、木造の駅舎は明治42年(1909年)の開業当初の姿を留めている。最近、大畑駅の旧保線詰所が囲炉裏キュイジーヌのレストランに生まれ変わり、お隣の矢岳駅では古民家再生ホテルが予定されていることからも、このローカル線が、鉄道旅再生の注目のコンテンツになっていることがわかる。 旅のポイントとなる下車駅にはさまざまな歴史遺産や、海山の景観が用意されている。と同時に、「車窓」からの景色をめぐる路線それ自体にも、歴史と文化が色濃く残されている。車外に向かって大きく開かれた窓から、次々と移り変わる風景をじっくりと味わいながら、路線そのものが持つ魅力を知るのも「ななつ星in九州」の旅の醍醐味である。おこばやたけかりかちとうげおばすて木のぬくもりが心地よいシックなスイートルーム。49ラウンジカーの大窓から絵画のような景色を望む。意匠が凝らされたラウンジカーのバーカウンター。
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