2 日本美術の冒険第54回文・橋本麻里100年経っても新しい。織りなしたデザインCSignature20© Fondazione Musei Civici di Venezia - Museo Fortuny会期 : 2019年7月6日(土)~10月6日(日)開館時間 : 10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、8月12日~15日、 会期最終週平日は21:00まで ※入館は閉館の30分前まで)休館日 : 月曜(祝日・振替休日の場合、9月30日と トークフリーデーの7月29日、 8月26日は開館)会場 : 三菱一号館美術館(東京・丸の内) 公式サイト https://mimt.jp/fortunyお問い合わせ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)マリアノ・フォルチュニ《テキスタイルのための下図》1907年以降 プリントした絹タフタ、厚紙に貼り付けフォルチュニ美術館蔵マリアノ・フォルチュニ《オペラジャケット》 1920年代 絹ゴーズにステンシル・プリント、トンボ玉《デルフォス》 1920年代 絹サテン・トンボ玉 神戸ファッション美術館蔵マリアノ・フォルチュニ旧蔵染め型紙19世紀末 和紙、柿渋フォルチュニ美術館蔵© Fondazione Musei Civici di Venezia - Museo Fortunyはしもと まり/日本美術を主な領域とするエディター&ライター。永青文庫副館長。著書に『SHUNGART』(小学館)、『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)。 特別展マリアノ・フォルチュニ織りなすデザイン展 19世紀末から20世紀初頭にかけて、モードは大きな変革の時を迎えていた。ラファエル前派の絵画、あるいはイサドラ・ダンカンやロシア・バレエの舞台衣装などには、既に肩を支点とした単純な筒型からなるギリシャ・ローマ風の服が繰り返し現れていた。1906年、その流れの延長に、ポール・ポワレがコルセットを着けないハイウェストの古代ギリシャ風ドレスを発表。 そして翌年、空間的にはギリシャを中心とする古代地中海世界やオリエント、イスラム世界、時間的には中世ヨーロッパのゴシックや、イタリアのルネサンスに深い共感を寄せるマリアノ・フォルチュニ(1871~1949年)が、「衣服は身体の線に合うようにつくられたものでなければならない。そして、自由に自然にフィットするものでなければならない」という信念に基づき、絹サテンの不規則なプリーツが全身を覆うドレス「デルフォス」を、ヴェネツィアで発表する。 フォルチュニはまた、ヨーロッパからアジア、中東に至るさまざまな地域、時代ごとに収集した布地から図柄を描き起こし、シルクスクリーン印刷の技法を用いて布地に多色プリントを施した、コートやジャケット類も制作している。「デルフォス」の軽やかさ、単純さに比して、その上に羽織る直線的な裁断の上着は、中世風、あるいはルネサンス風の、時代錯誤なほどどっしりした華麗な質感を演出した。 今展では、彼の邸宅兼アトリエを美術館として公開するフォルチュニ美術館(ヴェネツィア)の全面的な協力を得て、服飾作品を軸に、絵画、版画、写真、舞台関連作品、彼が蒐集した日本の染め型紙を含むデザイン関連資料等を展示。その創作の全体像を俯瞰する。olumnText by Mari HASHIMOTO20世紀初頭の服飾界の寵児がArt
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