SIGNATURE 2019 6月号
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みだろくつりふねのさぶなつまつりなにわかがみ播磨屋一門の研鑽 文・小玉祥子 写真提供:松竹株式会社 吉右衛門を頭とする播磨屋一門の二本柱というべき頼もしい存在が中村歌六、中村又五郎兄弟だ。初代吉右衛門の弟、三代目中村時蔵の孫で、共に立役として活躍する。歌六の長男・米吉、又五郎の長男・歌昇、次男・種之助も若手花形として颯爽とした舞台ぶりを見せている。 歌六は昭和25年(1950年)生まれ。立役から老け役まで口跡の確かさと自在な演技で舞台に厚みを与える。昭和襲名。浄瑠璃物の名作《伊賀越道中双六》では対照的な二役を吉右衛門相手に勤めて成果を上げた。ひと役が《沼津》の平作。吉右衛門の十兵衛の生き別れた父親で、貧しいながらも実直で子供思いの老人を活写した。もうひと役が《岡崎》の幸兵衛。吉右衛門演じる唐木政右衛門が師事した剣豪で、すべての事情を呑み込みながら、表には出さない肚芸を見せた。ほかにも《熊谷陣屋》の弥陀六、《夏祭浪花鑑》の釣船三婦、《助六》の意休、《佐倉義民伝》の渡し守甚兵衛などが印象に残る。 米吉は平成5年(1993年)生まれ。丸顔で愛らしく、こぼれ出るような美しさを見せる若女方。本興行では《秀山十種の内松浦の太鼓》のお縫や《河内山》の浪路、《絵本太功記尼ヶ崎閑居の場》の初菊などの娘方に魅力を発揮しているが、若手公演や勉強会では《一條大蔵譚》の常盤御前や《仮名手本忠臣蔵六段目》のおかるなどの大役も演じている。「秀山祭」に向けて。当代中村吉右衛門を筆頭に、実力派から新世代の花形まで、芸の研鑽に余念がない秀山祭への招待238平成22年(2010年)9月、新橋演舞場「秀山祭九月大歌舞伎」《伊賀越道中双六 沼津》雲助平作=中村歌六なかむら かろく|昭和25年(1950年)生まれ。四代目 中村歌六の長男。昭和30年(1955年)9月、歌舞伎座《夏祭浪花鑑》伜市松ほかで四代目 中村米吉を名乗り初舞台。昭和56年(1981年)6月、歌舞伎座《一條大蔵譚》の一條大蔵長成ほかで五代目 中村歌六を襲名する。なかむら よねきち|平成5年(1993年)生まれ。中村歌六の長男。平成12年(2000年)7月、歌舞伎座《宇和島騒動》の武右衛門倅武之助で、五代目 中村米吉を名乗り初舞台。平成25年(2013年)3月、ル・テアトル銀座「三月花形歌舞伎」《夏祭浪花鑑》傾城琴浦=中村米吉56年(1981年)に五代目歌六を五代目中村歌六五代目中村米吉

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