酸味と塩気を、餅の甘みが受け止めて、笑顔を呼ぶ。 さらに左嵜さんの真骨頂、「鮒寿しパスタ」が出された。クリームと牛乳、飯、白ワイン、マッシュルームで合わせたソースがパスタに絡む。食べると上品のようでいて、一筋縄ではいかない力が宿っており、無性に日本酒が恋しくなるパスタである。 続いて「本もろこ焼き」ときた。すっかり高級魚になってしまった天然の本もろこを、自分自身の脂で揚げるようにじっくり焼いていく。しばらくすると脂が滲み出て、てらりと光り、炭に滴り落ちる。旨みが濃い。その旨みの後から香りが立ち上がる。本もろこは、やはり骨が軟らかくなる、3月がうまい。 鮒寿しの頭だけを入れた、お椀も素晴らしい。一口目は淡いが、次第に鮒寿しから酸味や旨み、塩気や脂、香ばしさが溶け出て、つゆは濃密を膨らませ、滋養を染み渡らせる。最後に残った頭を食べると、火が入ったゼラチン質が溶け出し、「とろん」と崩れ、幸せが体の奥底からせり上がってきた。これも『魚治』の清廉な鮒寿しだからこそ、生まれる幸せなのだろう。 最後は、煎った赤米をあられにあしらった「鮒寿し茶漬け」である。ザブザブとかきこめば、滋養が体に行き渡る。 「僕らの土地の恵みは、寒さです。寒さがあるから魚にも脂が乗る。そして春のありがたみがわかるのです」。そう語る左嵜さんの料理には、琵琶湖の自然に対する敬意が、満ち満ちていた。51京都駅から2駅で、京都観光にも便利な大津市にホテルはある。築100年以上の町家を今後100年使えるように完璧にリノベーション。古き良き町家の景観を活かしつつ、住むように泊まることができる快適な空間が広がる。フィン・ユールやハンス・ウェグナーなど、有名デザイナーの家具と最高級の寝具、全室に専用のバスルームを完備。商店街にも馴染んだ外観。玄関から一歩外に出ると、商店街の人とのふれ合いがある。『湖里庵』営業内容湖里庵再建までの期間は、月2回いずれかの金曜日に営業予定。場所:フロント棟 「近江屋」 ダイニングエリア定員:カウンター6名と2~4名用テーブル1席時間:18:00一斉スタート料金:お一人様 13,000円/税別・サービス料込内容:滋賀の食文化を伝える、鮒寿しをはじめとする琵琶湖の湖魚を使ったコース。お問い合わせ・予約は『湖里庵』まで。電話:0740-28-1010HOTEL 講 大津百町住所:滋賀県大津市中央1-2-6電話:077-516-7475http://hotel-koo.com/
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