SIGNATURE 2019 7月号
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「トーネットの代表的な14番のエレガントさと、自分なりのデザイン言語と哲学を入れ込みたかった。スチームで曲木を行う技術や丸みといった職人技を残しながら、フランクフルト・チェアというドイツの学校で使われる質素な椅子のエレメントを加えました」 しかし、本社のフランケンベルクの職人さんと共に作業をする体験の中で、「自分は田舎育ち」というセバスチャンは、手作業の大切さを再認識する。100年前には万人のための大量生産だったトーネットの椅子も、人件費の高い現在の手作業はコストもかさむ。セバスチャンは自分と同世代の消費者の感覚も配慮し、機械に委ねる部分と手作業のよさを残すことで、118番スツールの価格帯を抑えた。 「自分たちの年代はいろいろな国の文化を共有しているし、日本の食事やデザインも簡単に手に入るようになった。何にでも手が届く分、フュージョンとか、グローバル化したものよりも、もともとの価値あるものを知りたくなる。日本は古いクリエイティブな工芸の技術が残っていることが素晴らしいと思います。欧州の職人の持つ技術や文化を継承していくことは、今後、デザイナーとしての責任だと感じています」 デザインはコミュニケーションツールと語るセバスチャンは、等身大で話のできる職人と消費者を繋ぐメンター(助言者)のような存在だ。彼のさらなるステップに多くのメーカーからの期待が寄せられている。セバスチャン・ヘルクナー スタジオStudio Sebastian Herknerオフェンバッハのオフィスは、学生時代に住んでいたフラットとその下の階を螺旋階段で繋げた2フロア。思い立ったら、行動に移す。何でも造っちゃうセバスチャン。Geleitsstraße 92D-63067 Offenbach am Main, GermanyTel: +49 69 8236 8081www.sebastianherkner.com日本での取扱先yamagiwa tokyo 東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル9階Tel : 03-6741-5800 www.yamagiwa.co.jp39Sebastian Herkner, Designerセバスチャン・ヘルクナー

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