SIGNATURE 2019 7月号
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現在に生きるバウハウス3  バウハウスと同時期の1924年、鉄鋼業で富を築いたフリードリッヒ・アルフレッド・クルップの妻マルガレーテが財団を設立、エッセンにアーティストコロニー『マルガレーテンへーエ』をオープン。絵画、彫刻、印刷、セラミックに彫金と、多くの女性を含む、クリエイティブなアーティストが集まっていた。エッセンでは1927年に手工芸とデザインの専門学校フォルクヴァング校がオープンし、産業が盛んだったルール地方でのバウハウスのような役割を担っていた。 世界遺産に指定されているツォルファライン炭鉱跡の片隅にある『マルガレーテンヘーエ工房』は、その当時の息吹を今に伝える唯一の後継で、1994年に韓国人の李英才とクラウディア・ノイマンなど5人の陶芸マイスターが集まって再スタートを切った。 「1960年代、パリでアリアンヌ・ムヌーシュキンらが設立したテアトル・デュ・ソレイユ(太陽劇団)の、裏表なく、みんなが平等に活動するという考えを続けたかったのです」と李さん。が入れ替わったが、白から緑系、褐色までシリーズで6色、すっきりとしたシンプルなフォルムで毎シーズン変わらない、飽きのこない日常づかいの手作りの陶器を生産してきた。 「100年前、バウハウスが開校した時代は大量生産が目的でしたが、今はこうして自分たちの手で製作を続けていくことに責任を感じています。食のリーヨンツェPhoto: Dokyun Kim右から:マイスターのドイツ人ミヒャエル・シュマンドさん、ポーランド人のダニエラ・グラッツキさんと石岡祥子さん。/取っ手付けなど細かい作業も慎重にこなす熟練のミヒャエルさん。/ダイニングの食器棚には工房で製作された器や皿がびっしり。/作業にいそしむ研修生のリサ・マリーさん、マックスさんとリンさん。30年間、いろいろな国籍のマイスター右:ツォルファライン炭鉱の道具小屋だった建物が工房になっている。左:工房主宰の李さんは作家として作品も製作し、多くの人に器を見てもらいたいと展覧会で献身的に作品を発表している。バウハウスの精神が宿るハンドクラフトの美学Young-Jae Lee, Founder李英才(リー・ヨンツェ)Handwerkliche Ästhetikvon der Meistern

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