SIGNATURE 2019 7月号
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海の命に寄り添う三重県の指導のもと、養殖真珠貝の貝殻を粉砕し、トウモロコシ粉と混ぜて作った飼料を豚に与えたところ、腸内環境が整い、真珠貝のカルシウムが発育を促し、上々の仕上がりとなった。名実ともに「パールポーク」の誕生である。「肉を見ながら、豚と向き合いながら交配を続けたら、一層美味しくなりました。豚も餌も自家製です」。河井さんは自慢の豚の話になると、少年のように目を輝かせる。 午前10時を回った和具の港、海女小屋で準備をしていた海女たちが一斉に乗り合い船に向かう。「今日は大島(無人島)の神社にお参りする日だから」。磯めがねや足ひれと共に、神米と御神酒も忘れない。 リアス海岸が複雑に入り組む志摩の海中には、アワビが育つ海の森がある。海女さんは約2000年以上前から志摩の海に潜り、海の森を見守りながら、「採り過ぎない」漁を続けてきた。志摩では昔から3寸5分(10・6センチ)未満のアワビは禁漁。海女はナマコやサザエも採り、ワカメやヒジキなどの海藻も採るが、時期や漁場は細かく定められている。「男だとさ、力まかせに石をどかしたり、無理して深く潜るやろ」。そう、海女は自分の身体を守るためにも無理をしないのだ。信心深く海を畏れるから、海の命に寄り添うことができると知った。 志摩のエコシステムは、ここに暮らす人々によって絶妙なバランスに保たれているようだ。志摩市は今、食を中心に和やかな持続可能な社会を目指している。山に手を入れ、海を守る人がいる限り、志摩はこれからも「御食国」であり続けるだろう。おみきInformation海女小屋から漁に向かう海女たち。籐製の乳母車で道具一式を運ぶ、どことなく懐かしい風景。現在鳥羽・志摩の海女は、30代~80代まで約750人。アワビのほとんどは海女漁によるもの。志摩市観光協会運営の海女小屋体験施設『さとうみ庵』では、海女小屋(海女が漁の合間に身体を休め、火を焚いて身体を温める小屋)を再現した小屋で、現役の海女が眼の前で焼く海の幸を楽しみながら、海女から直接話を聞くことができる。ダイナースクラブ フランスレストランウィーク2019のガラディナーでは、『志摩観光ホテル』総料理長の樋口宏江シェフが、スペシャリテの「鮑ステーキ かつお香る軽い焦がしバターソース」を披露する予定。海女小屋体験施設 さとうみ庵三重県志摩市志摩町越賀2279 電話 0599-85-1212 http://satoumi.com57ダイナースクラブ フランスレストランウィーク開催記念【ガラディナー】 開催日:2019年9月19日(木) 会場:ホテルニューオータニ東京 *詳しくは次ページをご覧ください。 アワビ

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