SIGNATURE 2019 7月号
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信仰と歴史に心打たれるアンデスバロック街道写真・佐藤良一 文・鈴木博美 ペルー政府観光庁(https:..//wwwperutravel/jp/) 空気は明らかに薄く、肌に差し込む太陽の力強さが、アンデスの高地にいることを否応なく実感させる。強烈な日射しを避けるように、アドベ(日干しレンガ)造りの薄暗い教会に逃げ込む。教会内を見渡すと、黄金色の眩い主祭壇に光り輝く聖母マリア、宗教画で埋め尽くされた壁。天井と柱にはたにあいとど谷間に刻まれた聖なる祈りインカ帝国の都として栄えたクスコを中心に、インカからスペインの支配を経てこの国に残された建造物は、未だ人々を惹きつけてやまない。その風景の中で、より大きな存在感を放つのが、キリスト教の教会群だ。山深い谷間の集落には、創建当時の姿を留めた教会が、今もインディオたちに寄り添っている。コンキスタドールの夢の跡66クスコから南東へ40キロほどのアンダワイリーリャス村にある、インカ時代の神殿を礎石として創建されたイエズス会の教会。内部は南米で最も古いとされる宗教画や「天国への道」などの壁画で埋め尽くされ、天井は中世キリスト教文化とイスラム文化が融合したムデハル様式で彩られるなど、見る者を圧倒する。サン・ペドロ教会San Pedro Apóstol

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