った。1492年、ムスリムからイベリア半島を奪還した国土回復運動「レコンキスタ」の宗教的情熱は、新大陸にも向けられた。宣教師たちはクスコを中心に各地へと出向き、租税徴収の効率化のために発令された先住民集住化政策をもとにインディオたちを強制的に集め、レドゥクシオンと呼ばれる教会を中心とした集落を築いてキリスト教の布教を進めたのだ。 クスコのアルマス広場に立つイエズス会の『ラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会』は、その中心となる。この教会から始まり、南の谷へと続く街道沿いには、レドゥクシオンとしてスペイン統治初期に建立された『サン・ペドロ教会』『サン・ファン・バウティスタ教会』、そして『ビルヘン・プリフィカダ聖母礼拝堂』が並ぶ。これら4つの教会を結ぶルートを「アンデスバロック街道」と呼び、その歴史的価値が見直され、今注目を集めている。インディオは、宗教画にトロピカルな動植物を描き、聖人にアンデスの神を重ねて受け入れてきた。また、死後の世界を描く「死」「最後の審判」「天国」「地獄」と、人生の終焉とその後の進む道を4場面に展開する「四終」の迫力は、観る者を圧倒する。インディオを改宗へと導くには、魂を揺さぶるほどの大きな衝撃と眩い限りの神々しさが不可欠だったということを、知らしめているかのようだ。 「アンデスバロック街道」に点在する教会には、今日も民族衣装を纏い、褐色に日焼けしたインディオが祈りを捧げにやってくる。聖母マリアを大地の女神・パチャママに重ね合わせて。To citadel of MachupichuSouth ValleyTo Lake Titicaca68ペルー共和国リマクスコラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会クスコウルバンバ川サン・ペドロ教会サン・ファン・バウティスタ教会ビルヘン・プリフィカダ聖母礼拝堂クスコの中心となるアルマス広場に面するかつてインカ帝国の宮殿があった場所に建てられた、アンデスバロック街道の起点となる教会。荘厳な石造りのファサード、金箔で覆われた主祭壇など、アンデスに建設された多くの教会のモデルともなった。スペイン人とインカ皇女の結婚を描いた絵画が、この地の歴史を物語っている。ラ・コンパニーア・デ・ヘスス教会Iglesia de laCompañia de Jesúsアンデスバロック街道
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