SIGNATURE 2019 8&9月号
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哲也による《マダム・バタフライ》の振り付けは驚きの連続だという。 「リハーサル前には日本が舞台だから〝和〞の要素が入ってくるだろう、着物的デザインの衣装では動きが制約されるだろうといった予想はしましたが、バレエと〝和〞が一体どういう形で結びつくのか想像もできませんでした。 芸術監督の熊川さんの振り付けは、バレエの動きとは違う、表現したことがない動きが自然にダンスになり、和とバレエがひとつになっているんです。全く経験のない振り付けです。日本舞踊をはじめ幅広い動きを研究し尽くされたのでしょう。動きというよりもニュアンスが見事に反映されています」 日本人の身体にまつわるさまざまな要素を、すべて熊川自身のものとしているからこそ、西洋文化の中で生まれたバレエと日本的な要素が自然に融合しているのだろう。 「相手から『踊りましょう』と誘われたときも、バレエ独自のマイムではなく、静的で奥ゆかしい動きで表現します。日本人がこうした日本的な仕草を舞台で自然に表現できるとは言い切れません。でも熊川さんご自身が見せてくださる動きを真似てみると、不思議なほどすっと身体に入ってきます」 バレエ用語も今回のリハーサルではほとんど使われない。 「バレエという枠にとらわれず、それぞれの役がどう感じ、どう動きたいか典から現代作品まで多彩な作品を経験してきた中村だが、熊川むくをダンサーの身体を通して表現しているからではないでしょうか。バレエだからという制約はなく、限界を超えて挑戦する。いえ、ご自身は挑戦とも思っていない、熊川さんに限界や不可能はないのかもしれません」 今回中村が演じるバタフライは14歳。無垢な少女が花魁の世界を知り、ピンカートンと出会い、やがて結婚する。 「表面的なストーリーを語るのではありません。内面の葛藤、物語のさらにその奥にある世界を表現する。作品をどう理解し、どう伝えていくか、熊川さんはそこに懸けていらっしゃる。 作品に対し熊川さんが持っている情熱の炎をダンサーがしぼませてはいけない、いつもそう思っています」 振付家とダンサーが互いの情熱、エネルギーを交換し合うなかでこそ濃密な作品が生み出されていく。前作《クおいらんレオパトラ》の振り付け時に熊川の放った「祥子のきれいなアラベスクは見たくない」という言葉から、彼女の苦悩が始まった。 「求められているのはこういうことではないんだと理解しても、どこに向かうのかが最初はわからない。練って、練って、はぎとられ……を繰り返しながら、最終的に『これだったんだ!』とわかる。経験すると病みつきになります。踊る前は恐ろしいけれど、終わった後にまたやりたいなと思う作品を創り出すのが熊川さん。そういう作品を踊る経験はかけがえのないものです。時代を超え、観た人に感動を与えダンサーが踊りたいと思える作品を創りたいといつも仰っています」 深淵な表現の世界を経験し成長できることが熊川作品の魅力。再び古典作品に戻ると新しい自分を感じる。 「この夏にはバレエ音楽のコンサートで《白鳥の湖》を踊ります。自分の人生と繋げていける作品です。一年の最後は《くるみ割り人形》。まるで絵本の中に入り込んだようで子どもから大人まで誰もが楽しめますし、熊川さんならではのシーンも見どころです」 毎年年末に上演されるので、ダンサーにとっては自身の成長や変化を感じる指標となる作品でもある。 「パートナーは高橋裕哉さん。若く可能性を秘めた彼からエネルギーやフィーリングをどう感じられるのかも楽しみですし、熊川さんから彼を託された責任も感じます。彼は私と同時期にハンガリー国立バレエ団にいました。私のほうが先に帰国し、彼が昨年Kバレエに入団。うれしい再会となりました。お互いに〝化学変化〞を起こし合うことを楽しみにしています」ゆうや1512日(土)12:30、12日(土)16:30 13日(日)12:30、13日(日)16:30 14日(月・祝)13:0029日(金)18:30 、30日(土)12:30 / 16:30お申し込み ダイナースクラブ チケットサービスWEB予約 https://dnticket.jp/フリーダイヤル 0120-243-543 (月~金10:00~18:00 土・日・祝休)※出演の詳細はKバレエ カンパニーのオフィシャルサイト (www.k-ballet.co.jp)でご確認ください。※4歳以下入場不可(11月30日夜公演のみ3歳以下入場不可)※配送のみの受け付けとなります。 ※チケットは公演日の約1週間前までに発送予定です。※お手元にダイナースクラブカードをご用意のうえ、お電話ください。Ticket InformationPhoto: Toru HiraiwaPhoto: Hidemi SetoWinter Tour 2019《くるみ割り人形》公演期間[東京会場]:11月28日(木)~12月1日(日) 印は中村祥子さん出演回会場:Bunkamuraオーチャードホール11月28日(木) 14:00 、29日(金)14:00 12月1日(日)12:30料金(全席指定・税込):S席12,500円【ダイナースクラブ会員特別価格】S席定価13,000円⇒12,500円熊川哲也 Kバレエ カンパニーAutumn 2019《マダム・バタフライ》公演期間:9月27日(金)~10月14日(月・祝)中村祥子さん出演回: マダム・バタフライ役/ 花魁役Bunkamuraオーチャードホール[東京]公演9月27日(金)18:30 、28日(土)12:3028日(土)16:30 、29日(日)13:00 東京文化会館[東京]公演10月10日(木) 14:00 、11日(金)14:00 料金(全席指定・税込):S席定価16,000円【ダイナースクラブ会員優待】Kバレエ カンパニーオリジナルグッズ付き古

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