知られざるアート写真・阿部了 文・いなもあきこのみ まず、この左右のページに掲載された写真をご覧いただきたい。荒々しくも柔らかな鑿あとに目を奪われる人物像、そして昆虫のようにも見える精緻な造形作品。作風は違うが、いずれも北海道で生まれ育った彫刻家・砂澤ビッキの手によるものだ。これほど高い技能と創作の幅、唯一無二の強烈な個性を持つアーティストは、世界を見回してもそうそういないだろう。 実は北海道は、知られざる芸術の宝庫だ。地元ではその実力が高く評価されてきたにもかかわらず、情報が十分に伝播せず、全国的にはごく少数の専門家たちだけが知るアートが数多く存在する。 近年になって、少しずつ彼らの魅力が全国に伝えられ、東京などで展覧会が開かれることも増えてきた。だが、北海道で生まれ育った作家による、北海道で創作されたアートは、やっぱり現地で味わってこそ。そんな北海道の知られざるアートを再発見し、真価を肌で感じる旅に出た。 Photographs bySatoru ABEText byAkiko INAMOExploring Native Art and Crafts右:音威子府村にある、『エコミュージアム おさしまセンター BIKKYアトリエ3モア』で展示される砂澤ビッキの作品《エカシ~森に聴く~》(1985年)。左:同《午前3時の玩具》(1987年)。いずれも音威子府で生まれた。29Special FeatureHokkaido:
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