メムアースホテルたいき高山脈に見守られた約5万6000坪の広大な十勝地方の牧場に、ぽつん、ぽつんと佇む、美しい家々。よく見ると一つずつ形が違い、しかもどこか変わっている。ここは、〝建築の未来〞に泊まれるホテルなのだ。 2011年に発生した東日本大震災をきっかけに、従来のエネルギーに頼らない持続可能な暮らし方を研究するため、寒冷地住宅の実験施設『メムメドウズ』が大樹町に設立された。同時に、国内外で活躍する建築家・隈研吾さんを審査委員長とする「国際大学建築コンペ」も開催。その最優秀作品を、敷地内に次々と具現化していった。 昨年11月、それらの最先端建築を宿泊施設として活用する、『メムアースホテル』がオープン。当初は1棟のみを使った1日1組限定の宿だったが、今夏から順次宿泊棟を増やす予定だ。 白い外観が目を引く《メーム》は、隈研吾建築設計事務所による実験住宅。アイヌの伝統民家・チセをモチーフに、デザインされた。空間を完全に仕切る壁はなく、囲炉裏のあるリビングルームとベッドルーム、バスルームが一体化している。家全体が二重の白い膜で覆われ、夏は風通しがよく、冬には内外の膜の間にできた空気の層が太陽熱で暖められてぽかぽかに。夜になれば白い膜を通して室内の灯りがぼんやりと漏れ、外から見ると幻想的で美しい。 一方、傾斜した屋根が目印の《ホライゾンハウス》は、米ハーバード大学が手がけたもの。周囲の環境と対話す大樹Taiki建築の未来を、泊まって体験 日38上右:元サラブレッド生産牧場だったため、今も馬を飼育。上左:レセプション兼レストランの《スタジオ メム》。中右:グラフィックデザイナー・栗谷川健一氏のポスターなど施設内にはアートも数多い。中左:《スタジオ メム》は伊東豊雄建築設計事務所により、牧草保管用倉庫が改装されたもの。下段:隈研吾氏が改装した旧・厩舎。宿泊施設としてオープン予定。MEMU EARTH HOTEL
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