ることを目指し、カラマツの牧柵を再利用した四方の壁に窓を設え、360度の景色を楽しめる。ワンルームの空間は3段階の高さの床で構成され、冬は暖かな上段で、夏は涼しい下段で過ごすことでエネルギー消費量を抑制。冬、積もった雪がちょうど中段の床と同じ高さになると、まるで地平線に腰掛けているような感覚になる。 斬新さに驚いたのは、オスロ建築デザイン大学の《インバーテッドハウス》だ。その名のとおり、内と外をひっくり返した家。リビングルームやベッドルーム、バスルームは外で、悪天候時に避難する場所だけ内側にある。北海道の自然と季節の移り変わりを、文字どおり肌で感じられるのがおもしろい。 馬と同じ空間で暮らす《バーンハウス》、地域と共生する《町まとう家》も、順次宿泊可能に。ほかにも、旧・牧草保管用倉庫を伊東豊雄建築設計事務所が改装した、レセプション兼レストラン《スタジオメム》など、建築好きにはたまらない見どころが満載だ。 ただ、そうした建築の凄みに加えて素晴らしいのが、どこにいても北海道の雄大な自然に抱かれていると実感できること。ふとした瞬間に窓から外を眺めると、エゾリスやキタキツネの姿が覗き、草原が目の前に広がる。そっと寄り添ってくれるスタッフの対応は清々しく、若きシェフが腕を振るう料理も舌と目を存分に楽しませてくれる。実験住宅という前衛的な響きとは無縁の、心地よい滞在が待っている。 39上右:約5万6000坪の敷地内に、実験住宅が点在。カワセミやエゾリス、エゾジカなどが部屋のそばまでやってくる。上左・下右:隈研吾建築設計事務所の《メーム》。下左:外と内がひっくり返ったオスロ建築デザイン大学の《インバーテッドハウス》。見学は要予約で1人1,500円(税込)。公開日は随時配信。スタッフの建築ガイド付き。MEMU EARTH HOTEL北海道広尾郡大樹町芽武158-1TEL: 01558-7-7777 memu.earthhotel.jp
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