SIGNATURE 2019 10月号
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Signature21作:北村想/演出:寺十吾/音楽:坂本弘道出演:中井貴一、段田安則、吉田羊、趣里、林遣都、   松澤一之、渡辺えり ほか公演日程[東京公演]:2019年11月30日(土)~12月28日(土)対象公演(ダイナースクラブチケット発売開始 9月20日):11月30日(土)、12月3日(火)、12月25日(水)19:0012月7日(土)、12月19日(木)、12月22日(日)14:00料金:S席 9,000円(税込)会場:世田谷パブリックシアター(東京・三軒茶屋)http://www.siscompany.com/kazehakase/※やむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。あらかじめご了承ください。 ※出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。 ※未就学児童のご入場不可。 ※お手元にダイナースクラブカードをご用意のうえ、お電話ください。 ※お申し込みに際しては88ページの注意事項も併せてご確認ください。 劇作家の北村想が、さまざまな日本文学からインスピレーションを受けて新たな劇世界を創造する「日本文学シアター」シリーズ。シリアスな翻訳劇からコメディ、ミュージカルまで多彩なラインナップと豪華なスタッフ・キャストの顔合わせで知られる、シス・カンパニーの人気企画だ。 2013年から始まったシリーズも、はや6作目となる。太宰治、夏目漱石、長谷川伸、能「黒塚」、江戸川乱歩ときて、今回取り上げるのは無頼派の作家・坂口安吾。風変わりな博士を主人公にした小品『風博士』や『白痴』などの安吾作品をモチーフに、北村が風の吹くまま気の向くまま、縦横無尽に想像力を膨らませて仕上げたのが本作『風博士』だ。 舞台は敗色濃厚な戦時下の大陸。風を読むことができるフーさんと呼ばれる男(中井貴一)を中心に、切迫した現実を生きる人々を描く……と書くとシリアスな印象を受けるかもしれないが、キーワードが「風」だけに、登場するのはそよそよと風をまとっているような心地よさを備えた人物ばかり。「日本文学シス・カンパニー公演日本文学シアターVol.6【坂口安吾】シアター」ではおなじみの段田安則、渡辺えり、趣里のほか、シリーズ初登場の吉田羊、林遣都らが中井“フーさん”とどんな関係性を築くのか楽しみだ。ふんだんに登場するノスタルジックな歌の数々も聴きもの。 下敷きとなっている文学作品を知っていてもいなくても、タイトルから浮かいざな さとるぶイメージを遥かに飛び越え、思いがけない世界へと誘ってくれるのが北村作品の大きな魅力。詩情あふれる美しいせりふにほのかなユーモアも織り交ぜて、どこかファンタジックで軽やかな余韻を残す。ところが柔らかな手触りの芯にあるのは、切実な人間の声や真実を見据えようとする透明な視線だ。声高に叫ぶことはなくとも、人の愛しさも愚かさも醜さも哀しさも、あらゆる人間の諸相が胸にぐっと迫ってくる。軽量級に見えて重量級の感動がじわじわ染みてくる点が、このシリーズが人気を博しているゆえんだろう。 その北村想の世界を熟知しているのが、シリーズ全作の演出を手がける寺十吾。俳優としても無二の個性を発揮する寺十は、北村戯曲の理想的な演出家と言っていい。戯曲の持つ深遠さを損なわずに、空間、音楽、音響、照明なども含めてエンターテインメント性も加味しながら立体化していく手腕は見事なものだ。今回も華と実力を併せ持つキャストを得て、同シリーズのまた新たな一面を見せてくれるに違いない。じつなしolumnText by Aki ICHIKAWATicket Informationお申し込み ダイナースクラブ チケットサービスWEB予約 https://dnticket.jp/フリーダイヤル 0120-243-543(月~金10:00~18:00 土・日・祝休)風の吹くまま気の向くままに……。日本文学を肴にした人気シリーズ、中井貴一を迎え、待望の新作登場文・市川安紀(演劇ライター)3Entertainment風博士

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