くぬ 南太平洋に浮かぶ小さな国、クック諸島。その中心の島、ラロトンガ島の夕暮れ。太陽が水平線の彼方に消えると、南の空に南十字星が浮かぶ。ラロトンガ島は一番近い大陸からでも約5000キロ近く離れており、空気が澄んでいるために星が煌々と輝く。星空に見守られるように、エイカツ(花飾り)や色鮮やかなアイランドドレスで身を包んだ人々がオーディトリアムと呼ばれる国立公会堂に集まり始める。 毎年7月末から8月初旬。ラロトンガ島で「テ・マエバ・ヌイ」と呼ばれるダンスを中心とした大会が催される。クック諸島を構成する15の島々によって競われるこの大会は、人口2万人弱の国が持つわずかながらの国家予算の一部を割いてでも必ず毎年行われる、国の威信を懸けたイベントだ。緩やかな時間が流れる島にも、この時だけは人々の踊りに懸ける熱狂的なエネルギーが溢れる。 会場に入ると、その熱気に圧倒される。〝巨漢の島〞として知られるクック諸島の人々が2000人近く会場にひしめき、ステージに向かって歓声を送っている。ステージの上では数十人のダンサーたちが、全身を使って激しく踊る。その背後には10人近くのドラマーが控え、マホガニーを刳り貫いて作満天に響く歌声。熱狂を生む踊りの祭典なまめ56上:ラロトンガ島ニカオ地区のダンサーたち。男性の踊りは激しく、全身の筋肉が躍動する。ダンスが終わった後に気を失うダンサーがいるほど。下右:司会者のパパトゥア・パパトゥアさん。独特の口調で大会を盛り上げる。下中:女性の踊りは官能的なのが特徴。腰を左右に振り、艶かしい。下左:ステージを見守る観客たち。
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