ったパテと呼ばれるドラムを叩いている。大小さまざまなパテの重奏により音に厚みが生まれ、会場全体の空気を激しく震わせる。そのリズムは力強く、かつ速い。 大会は1週間近くにわたって続き、毎晩違う種類の踊りが各島のグループによって披露される。かつてあった出来事や歴史をスローテンポで表現するカパリマ、ドラムのリズムに乗って激しく踊るウラパウ、男女の歌の掛け合いが中心のウテ、伝統詠唱のペエの4つのカテゴリーに分けられる。参加グループはドラムのリズムも歌の旋律も、振り付けも衣装も、毎年すべて新しいものを考案して参加するというから驚きである。そのため島民は数か月前から準備をする。 「大切なのは、踊りの向こう側にある膨大な時間やエネルギーなのです」 そう語るのは20年近くにわたって司会者として最もステージに近い場所で踊りを見守り続けてきたパパトゥア・パパトゥアさん。かつては自身も優れたダンサーであり、島の誰もが知っているアイコン的存在である。 近年、クック諸島の伝統的な踊りは少しずつ島外の影響を受け、変化しつつある。それは時代の流れとして受け入れるべきものであり、大切なのはその奥にある踊りに対する情熱のようなものだと彼は語る。踊りの振り付けや衣装などの目に見えるものではなく、踊ることによって立ち上る熱気こそが本質なのだ。57上:伝統詠唱の踊りであるペエ。植物の葉などを編んで作った衣装を身に着けて踊る。下右:座ったまま歌い、手の動きと表情で表現をするウテ。豊かな声量が会場に響く。下中:頭に載せる花飾り、エイカツ。島の人々は花を身に着けることを好む。下左:島には様々な種類の花が咲く。花飾りを作るための花を摘む女性。
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