SIGNATURE 2019 11月号
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Signature 魅惑的な声とはどのような声だろうか? 世の中にはその人が話すのを聴いただけで、うっとりとしてしまうような声の持ち主がいる。その人が歌ってくれればなおさらだ。 オペラで女性の色気を表現するのによく使われるのはメゾ・ソプラノ(中音域が充実した声種。高音のソプラノと低音のアルトの中間)の声である。 たとえばビゼー作曲《カルメン》。スペインのセビリアを舞台に、美貌のジプシー娘カルメンは、浅黒い肌と踊り、そして潤いのある歌声で男たちを夢中にさせる。サン=サーンス作曲《サムソンとデリラ》もそうだ。古代パレスチナでイスラエルの英雄サムソンを誘惑する、ペリシテ人の稀代の美女デリラはメゾの役である。彼女の歌声にサムソンはたまらなくなって、自分の怪力の秘密を漏らしてしまうのだ。そしてヴェルディ作曲《ドン・カルロス》。宮廷一の美女で、国王の愛人でありながら王子ドン・カルロスにも思いを寄せる美貌のエボリ公女は、やはりメゾの役柄である。それに加えて、メゾ・ソプラノ歌手はズボン役という若い青年の役を歌うことがある。中でもR・シュトラウス作曲の《ばらの騎士》に登場する青年貴族オクタヴィアンは、初々しさ、色気、青年らしい血気盛んなところを表現できる魅力的な役柄だ。 これらの役を演じて、いま世界で最高の評価を得ているのが、ラトビア出身のメゾ・ソプラノ歌手エリーナ・ガランチャである。ウィーン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場、英国ロイヤル・オペラ、パリ・オペラ座など、あらゆる歌劇場、そしてコンサートホールから熱望されている歌姫だ。 ガランチャは、金髪に青い眼、そして少し鋭さのある(女優顔負けの)美貌と、卓越した演技力の持ち主だ。気まぐれで野性的なカルメンから、宮廷の華のエボリ公女、そして美貌の青年貴族オクタヴィアンまでを演じるのに、彼女よりふさわしい人を見つけるのは難しいだろう。 しかし、オペラの舞台における彼女の最大の武器はやはり、あの声なのである。父親は合唱指揮者、母親は声楽コーチという音楽家一家に生まれたガランチャの声は、よく訓練され、広い音域で均一な響きを持ち、艶のある美しさで一度聴いた人間を虜にする。プライベートでは、指揮者の夫と娘たちがいる幸せな家庭を持ち、仕事の忙しさと家庭を両立しているガランチャ。だが、ひとたび舞台に立つと、彼女の芸術は私たちを誘惑し、どこまでも溺れたくなる“危険な薫り”を放っているのである。olumnText by Mika INOUCHITicket Information21※やむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。あらかじめご了承ください。 ※出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。 ※未就学児童のご入場不可。 ※お手元にダイナースクラブカードをご用意のうえ、お電話ください。 ※お申し込みに際しては93ページの注意事項も併せてご確認ください。© Paul Schirnhofer / DGピアノ伴奏:マルコム・マルティノー日時[東京公演]:2020年5月23日(土)13:30開演会場:すみだトリフォニーホール 大ホールアクセス:JR総武線・東京メトロ錦糸町駅徒歩約5分料金:S席17,000円【ダイナースクラブ会員特典】・良席保証:1階中央ブロック限定・コンサートプログラム付きお申し込み ダイナースクラブ チケットサービスWEB予約 https://dnticket.jp/フリーダイヤル 0120-243-543(月~金10:00~18:00 土・日・祝休)3オペラ界の頂点に君臨する美しきメゾ・ソプラノの歌姫、日本初、待望の単独リサイタル文・井内美香(音楽ライター/オペラ・キュレーター)エリーナ・ガランチャ リサイタル 2020El na GarancaEntertainment

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