島に溶け込む、
癒しのリゾート
Eternally Green Yakushima Vol.2

写真・平野功二 文・中村孝則
Photographs by Koji Hirano
Text by Takanori Nakamura

島で唯一のオーベルジュは、ピラミダルな山稜地帯が続く、
岳南地方と呼ばれる大自然の中にある。
3万平方メートルの広大な自然林の中に点在するヴィラ。
極上のフレンチに舌鼓を打ち、都会の疲れはスパが癒してくれる。
この宿を拠点に、悠久のリゾートライフを堪能する。

屋久島は、日本でも指折りの大きな島である。約500平方キロメートルは、伊豆大島の5倍半もあるという。そして、地図を俯瞰しただけだと分かり難いが、この島は海岸線から空に突き刺すような急勾配の山稜になる。島一番の高さを誇る宮之浦岳は標高1936メートルもあるが、これは九州全体の最高峰でもある。この島がこのような特異な形状をしているのには、島の成立が深く関わっている。屋久島の基盤となる花崗岩の地層が成形されたのは、およそ6000万年前のこと。その巨大な岩の塊が、1400万年ほど前から気の遠くなるような年月を重ねて隆起したのが屋久島だ。島全体がひとつの急峻な岩なのである。

 どこから眺めてもダイナミックな形相の島だが、とりわけ南岳地方と呼ばれる南部の奇怪な景色はずば抜けている。海岸線から眺めるトイモ岳からモッチョム岳周辺のシルエットは、まるでタヒチのモーレア島のようでもある。しかも、この辺りの道路脇には真紅のハイビスカスが咲き乱れ、大型のツマベニチョウが乱舞するのである。『サンカラ ホテル&スパ(sankara hotel & spa)屋久島』は、その南岳地方のトイモ岳の麓の、3万平方メートルという広大な森の中に位置している。

Information

sankara hotel&spa 屋久島

鹿児島県熊毛郡屋久島町麦生字萩野上553

0997-47-3488(24時間受付)

http://www.sankarahotel-spa.com

 このリゾートは、本格的な長期滞在型のオーベルジュとして2010年に開業した。客室総数も29に絞り、本格的なフレンチダイニングのほか、カジュアルダイニングやスパも備え、大人のためのスモール・ラグジュアリーなホテルとして人気も高い。主だった付帯設備を配した本館は、島の南海に面して建てられ、どこからも刻々と変化する海の大パノラマが楽しめる。プールの水は、地下水を汲み上げた屋久島の天然水。飲めるほどに澄んだ湧き水で身を解く快感はプライスレスだ。ちなみに、静かに冷えたプールは、屋久杉登山の足腰のアイシングにもちょうどいい。

悠久のリゾートライフ

 肝心の食事も、ウルサ方の期待を裏切らないだろう。メインダイニングの『okas』は地産地消をテーマに、島の新鮮な魚やフルーツなどの食材をはじめ、九州各地の生産者を訪問して、地元の農家との共生も図っているという。ガストロノミー・レストランでの修業経験を持つ大川賢太シェフの料理は、モダンさが盛り込まれ軽快だ。料理に使うハーブや食用花などは、シェフ自らが敷地内で育てたものを使う。メインのなかやま黒牛のジューシーさは印象的であった。女性であれば、デザートのマンゴープリンの虜になるはずだ。屋久島の完熟マンゴーがふんだんに使われ、まさに“口福”の一皿である。

 さて、屋久島において、上質なスパはありがたい存在だ。日常のリラクセーションはもちろんだが、トレッキングの前後に上手に取り入れれば、足取りもさらに軽くなるはずだ。そのあたりをスパのスタッフはよく心得ている。タイの伝統医学に基づいたハーバルボールで、身も心も癒されるはずである。ファシリティは旅慣れた大人にとっても申し分ないが、特筆に値するのはこちらのバトラーサービスだろう。客室の電話の“バトラーボタン”を押せば、瞬時に対応してくれる。これは実に頼もしく快適だった。また、歯ブラシの素材をトウモロコシの材料で作ったり、専用のレンタカーをプリウスにしたり、アメニティのひとつひとつから島の環境に配慮しているのにも共感がもてるのだった。

 ちなみに、プリウスは時間貸ししてくれるから、気が向けば自家用車のように足に使えばいい。個人的には、半日かけて島を一周してみることをお薦めしたい。特に、世界遺産エリアの原生林のトンネルをくぐる西部林道は、最高のドライブコースとなるだろう。5時間もあれば充分だ。
 縄文杉を巡るトレッキングから、極上のリゾートライフまで。「海に千年山に千年」の旅人をも癒す。いざ、悠久の、屋久島へ。

*前編では、屋久杉を巡るトレッキングを中心に屋久島の魅力をご紹介しています。

2014.12.25

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