GOURMET ー Whisky

TOKYO Whisky Librari

ようこそ、
琥珀色の
ライブラリーへ

  • 図書館や書斎を意味する「ライブラリー」という名を冠したウィスキーバーが東京・南青山にオープンした。シャンデリアで照らされた店内の、天井までの壁面を埋め尽くすウィスキーは1000種類以上。新たな蒸留酒の愉しみ方を伝授する「ライブラリー」へ立ち寄ってみてはいかがだろう。
  • 写真・秋田大輔 文・鈴木 行
     Photographs by Daisuke Akita Text by Gyo Suzuki

オーセンティックにカジュアルを
加えた新たなウィスキーの愉しみ

 ウィスキーの愉しみ方は千差万別だが、昨今のブームを見ていると、ウィスキーをソーダで薄めに割り、レモンなどを搾った軽い味わいのハイボールをジョッキで飲む居酒屋定番のスタイルはすっかり定着したようだ。もちろん「ハイボール」だけがウィスキーの飲み方ではないが、焼酎やワインのブーム同様、居酒屋やバルなどで気軽に飲める場所が格段に増え、「とりあえず」の一杯に生ビールだけではない選択肢を増やしたということでも、ハイボールの一大ブームは、長らくダウントレンドが続いていた業界に新たな光明をもたらした。

 ニッカウヰスキーの創業者とその妻をモデルにしたNHK連続テレビ小説『マッサン』のヒットも手伝って、今や世界の5大ウィスキーのひとつに数えられるジャパニーズ・ウィスキーの人気もうなぎのぼりで、寿司店などでは、プレミアム感の強い国産ウィスキーのソーダ割りなどが好評のようで、このブームはもはや一過性のものではない。

四半世紀ぶりのウィスキー・ブームは、ハイボールによってもたらされたが、ではそのトレンドが今後どのような方向に向かっていくのか。それを占うひとつの恰好の例が、東京・南青山にオープンした『TOKYO Whisky Library』である。ドアを押して一歩店内に足を踏み入れると、天井までの壁面いっぱいに造りつけられたウィスキーボトルのラックが目に飛び込んでくる。その数じつに1000種類超。そしてその偉容をさらに際立たせているのが、スケルトンで4.2メートルという都内でもなかなか出会うことのない天井高である。1920年代の禁酒法時代の酒場をイメージしたというライトブラウンのブリック(煉瓦)の壁を背景に、下からあおった間接照明が、琥珀色の液体を閉じ込めたボトルを美しく輝かせる。ウィスキーファンならずとも、このディスプレイは一見の価値がある。

マニアックなモルトの味わいから
カクテルで愉しむウィスキーまで

 ライブラリーの名は、まさに図書館の蔵書のようにボトルが居並ぶさまを見れば一目瞭然。ゴージャスな“ボトルの壁紙”とでも言えるだろうか。『TOKYO Whisky Library』が目指すのは、「ワクワク感」。こだわり過ぎて逆に間口を狭くしていたウィスキーバーではなく、あくまでウィスキーを中心に、カクテルや、ワイン、シャンパーニュ、シガーまで愉しめ、初心者にも入りやすい、スタイリッシュなバーラウンジ文化の発信拠点なのである。

バーラウンジの新たな愉しみ方として、店内には洒落た工夫が凝らされている。革張りのシングルソファに身を沈める快感、レトロなウッドテーブルやカッパーのロングテーブルなど調度品もほどよく、さまざまなタイプのシャンデリアも違和感なく空間に溶け込んでいる。よく海外の図書館や書店で目にする、レールで左右にスライドする移動式の梯子に乗ったバーテンダーが目指すボトルを探しながら、スピーディに移動する姿はちょっとしたパフォーマンス。ワインセラーをスライドすると隠された2~8名の個室が現れるのも、洒落ている。こうして醸成された居心地のいい空間を目当てに訪れる客層には、女性も多く、海外からわざわざ目指して来店する方もいるそうだ。

アルコールの多様性を伝道する
ウィスキーの“宝庫”

 1000種類を超えるウィスキー・ライブラリーの内訳は、シングルモルトとブレンディドのスコッチが600~700種類、バーボン・ウィスキーが100種類、ジャパニーズ、アイリッシュ、1970~80年代のヴィンテージのオールドボトルがそれぞれ50種類ほどで、種類は日々増え続けているという。オープン当初のウィスキーリストは金で箔押しされた書物のような体裁のもので、こちらもまたリフィル状にページを増やしていくそうだ。

ライブラリーおすすめのボトルを伺ったところ、いわゆるマニア垂涎のスコッチのシングルモルトではなかった。ひとつは、Whisky Advocate社より「世界のクラフト蒸留所トップ10」のひとつにも選ばれたオーガニック原料のみで手造りされたシカゴのクラフトウィスキー「コーヴァル」。アイルランドのダブリンに本拠を構えるインディペンデントボトラー(独立瓶詰業者)のアイリッシュ「ティーリング」。同アイリッシュ・シングルモルト「21年」。そして常に完売状態が続く世界に名だたる「イチローズ・モルト」の4本。いずれもウィスキーの原点回帰形の蒸留所であり、いま静かなブームを呼んでいる「クラフトウィスキー(地ウィスキー)」である。大手ではなく小規模メーカーで生産される、造りにこだわりを持ち味わいに個性が際立つ「クラフト」は、「イチローズ・モルト」を引くまでもなくブレイク必至のカテゴリー。ここでも『TOKYO Whisky Library』は、やはり一歩先を行っている。

 まずは気軽に訪れてみることをおすすめしたい。スタッフに好みを伝えておすすめを聞き、飲み方を相談する。1000種類を味わい尽くすのは至難の業だが、今まで体験したことのない味に出会えるのは間違いない。その多様性もまたこの店の魅力である。ちなみにバーテンダー氏におすすめのウィスキーカクテルを頼んだところ、ココナッツミルクにアイラ・モルトのラフロイグを合わせたオリジナルを出していただいた。その組み合わせに一瞬たじろいだが、飲み進めるうちにその相性のよさに不思議な感動を覚えたことをつけ加えておく。

Shop Information

TOKYO Whisky Library

東京都港区南青山5-5-24 南青山サンタキアラ教会2F

営業時間:月~土曜 18:00~27:00(L.O.26:00)

日曜 17:00~24:00(L.O.23:00)

*男のワードローブ第2回「グレナディン織りの粋」も併せてご覧ください。

2016.12.05

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