Travel My World Vol.9

ヴィラ 32

Villa 32

新北投 南国の温泉郷

台湾は全島に温泉が100か所以上もある温泉大国。なかでも日本統治の時代に拓かれた新北投(シンベイトウ)は台湾有数の湯治場として知られ、古き良き温泉街の趣が旅情を誘う。この南国の温泉郷に、台湾で初めてルレ・エ・シャトーに加盟した、小さなホテルが佇んでいる。

ナビゲーター(文と写真)・Ciel

Navigator: Ciel

イラストレーション・いとう瞳

Illustrations by Hitomi Itou

 私には3つの夢があり、その一つが「温泉のあるおうちに住むこと」だ。朝起きて温泉に入ってリフレッシュ、そして一日の締めに温泉に入ってリラックスをする――子供の頃からそんな生活を夢見ていた。2011年12月、ついにその願いを叶える日が訪れた。その地となったのが、日本統治時代に開発された台湾最古の温泉地「新北投」である。

温泉地「新北投」

画像提供:台湾観光局

 台北市の中心地からMRT(地下鉄)に乗り、わずか40分で到達できる新北投は、アクセスが便利な都会にもかかわらず、歴史的・泉質的・施設的にも、台湾トップクラスの温泉地。また、台湾人の投票による「台湾十大観光小城(台湾を代表する小さな街ベスト10)」で、台北で唯一選ばれた人気スポットである。ここには高級ホテル以外に、部屋内温泉付きのリゾートマンションも多く存在しているため、すぐに気に入る物件に出合うことができた。

新北投での台湾新生活は、毎日が新鮮だった。バス停の椅子に腰かけてフルーツをていねいに剥きながら食べているおばあちゃん、公園で裸足になりながらも麻雀の真剣勝負をしているおじさんたち、コンビニの椅子に“全力”で寝ている鼻毛が出た愛らしいおじいちゃんなど、高級温泉地と言われていてこの有り様……親日といわれている台湾人だから、日本人に似た感覚をお持ちだろうと思っていたのに、あまりに違う文化と生活習慣に唖然。まるで漫画の世界に迷い込んだかのようだった。

 観光地でありながらローカル感あふれる、そんな新北投の高台に、台湾で初めてルレ・エ・シャトーに加盟した台湾随一の高級ホテル『Villa32』が佇んでいる。「台湾を代表するホテルを創りたい」という創設者自らが設計・デザインし、完成までに実に4年半もの年月がかかったホテルである。約1500坪のゆったりとした敷地内に、客室は5つのみ。目指したのはただのホテルではなく、すべてのゲストに最高の体験を提供し、自宅のように寛いでいただく「隠れ家」。開業当初は会員制だったが、2005年に一般公開を開始すると共に、温泉スパやエステだけの日帰り利用も可能となった。

Villa32 ウォーターガーデン

Villa32 客室

Villa32 バスルーム

 門をくぐると、景色は一変。16歳以下は立ち入り禁止の大人のためのリゾートにふさわしい、緑あふれるラグジュアリーなウォーターガーデンが広がる。2016年11月にリニューアルオープンした客室は、バスルームだけではなくリビングルームの一部にも重厚な大理石が利用され、クールな印象を与える。

Villa32 室内休憩所

 音響設備はデンマークの「バング&オルフセン」、浴室設備はイタリアの「ボッフィ」、バス・アメニティは「フェラガモ」、食器類は「エルメス」とハイブランドばかりがそろう。ウェルカムフルーツのブドウ一粒をとっても、“選び抜いた逸品”であるという自信の高さがうかがえる。かなりの広さがある客室内温泉は天井がガラス張りになっていて開放感があり、夜には星空を眺めることもできる。

スパにある大浴場では、北投に湧き出た翡翠色と乳白色の2色の温泉と天然冷泉が6つ完備されている。ややトロミのある優しい温泉なので、何度でも繰り返し入浴が可能だ。そのため、うたた寝できるリラクセーションコーナー、地熱谷の湯けむりを眺めることができる露天風呂のテラス席、お茶やスナックを自由に楽しめる屋内休憩所などのファシリティも広く充実している。

 このようなハード面の充実もさることながら、ソフト面のレベルでも負けてはいない。どのスタッフもゲストを名前で呼び、各施設に行くまでのアテンドも必ずしてくれる。

 今ゲストがどこにいるのかがわかるよう、スタッフ同士の連携が素晴らしく、私がどこからきた誰なのか、事前に情報が共有されている。これもゲストの数が1日5組までと限定されているからこそできるサービスであろう。たとえるなら、日系エアラインのファーストクラスに乗った時のような至れり尽くせりの手厚いもてなしだが、それでいて、堅苦しくなくフレンドリー。その距離感が非常に心地いい。

 台北市内の5つ星ホテルにはすべて滞在してみたが、ここ以上に洗練されたホテルはなかったし、今後もこれだけ満足できるホテルと出合えるかどうか――。それはそれでまたの楽しみだったりする。

Vol.9 Villa32 The Restaurant

 健康のため、最近は卵白だけを使ったホワイトオムレツをオーダーしている。ここの朝食メニューにも「オムレツ」があるから、それを「ホワイトオムレツにして」とお願いすると、断固として拒否をされた。小さな屋台のドリンクショップでもミルク多めのリクエストができるし、夜市ですら「これを抜かして」「これを加えて」などという煩わしいお客にも応じてくれる超融通の利く台湾。それにもかかわらず、「こんな高級ホテルでリクエストに応じてくれないとは何事か!」と朝からしょんぼり……

 しかし、一口食べて理由はわかった。焦げ目ひとつない真っ黄色の美しいフォルム。中を開けるとふわっふわ×トロトロ食感の絶品オムレツ。なるほど! あなたはこのオムレツを私に食べさせたかったのね。ドヤッと言わんばかりにチラ見する店員さんの顔が可愛くて、朝からほっこり。洋食系朝ご飯はイマイチ口に合わないことが多い台湾で、こんなに美味しいオムレツがいただけるとは!

  • Villa32 バス・アメニティの「フェラガモ」
  • Villa32 The Restaurant フランスペリグートリュフ料理
  • Villa32 The Restaurant 朝食メニューの「オムレツ」

Ciel(シエル)|livedoor公式ブロガー。海外旅行カテゴリでのランキング1位を誇る人気ブログ「月に一度の世界スパ&ホテル巡り」を運営。世界のラグジュアリーホテルを趣味で巡る。いままでに46か国以上を訪問。国際線の年間搭乗回数は50を超える。2015年1月に個人のメディアとして初めて、フランスルポルタージュ大賞を受賞。同年7月に初の旅行記『月に一度の世界スパ&ホテル巡り』(KADOKAWA)を出版。

「月に一度の世界スパ&ホテル巡り」

http://cieltrip.blog.jp/

Villa32

Information

Villa 32

台北市北投区中山路32号

+886-2-6611-8888

http://www.villa32.com/

日本からのご予約/ルレ・エ・シャトー予約センター

0800-888-3326(9:00~17:00 月~金曜)

*「Travel My World」第8回『アマンダヤン』も併せてご覧ください。

2017.01.23

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