LIFESTYLE - Design Products

プロの感性が育んだ
“極み”の道具たち

日本のデザインプロダクツは、いま新たな局面を迎えている。資本力がなければ出展もままならなかったミラノ・サローネやパリのメゾン・エ・オブジェといった見本市が一般化し、さらには都市圏発のリデザインやクラウドファンディングなどの資金調達によって、地場産業が掘り起こされ息を吹き返す例も数多く見られるようになった。そして現在、そのプロダクツはさらなる進化を遂げようとしている。ひとつには、都市圏を介さない産地からのダイレクトな発信、そして世界に類を見ないオリジナルの技術と商品を磨き上げる原点回帰の流れである。

 「たたら」という製鉄技術によって砂鉄から実用品として生み出された日本刀が、神秘的な冶金的芸術品として今に伝えられるように、ヨーロッパのデザインの影響下から脱却し、産地独自の色をまとった、地方発・地方オリジナルのネオジャパン・プロダクツは、いま静かなブームを呼んでいる。地方発の“逸品”プロダクト、その一端を紹介する。

文・五十嵐 洋(Casokdo)、鈴木 行 
Text by Hiroshi IGARASH & Gyo SUZUKI

OTO

OTO

OTO

「特徴がないことが特徴」の
陶器から鳴る、唯一無二の音

 OTOと名づけられた物体。すぐさま思い浮かぶのは「音」だが、見かけはあくまで陶器。叩いて音が鳴るようなものかと思いきや、これはスピーカーだという。デンマークのプロダクトデザインユニット「KiBiSi」と、笠間焼の陶芸家・伊藤公象とのコラボレーションから生まれた、スマートフォンのための陶製アナログスピーカーは、ラッパ形状の筒部分でスマートフォンの本体に装備されている小型スピーカーの音を反響効果によって拡大させる仕組みになっている。

 笠間焼は、益子焼と並んで関東地方を代表する陶器で「特徴のないことが特徴」と評されるように自由な作風で知られるが、陶製のスピーカーとはオーディオマニアも驚きだろう。伝統的な技術と、現代の先端技術を取り込んだライフスタイルの融合を目指したプロダクトは、新しく、どこか懐かしい。

 音響効果を増大させる脚部分は岩手の木工工房でクルミ材から削り出されている。轆轤(ろくろ)で半工業的に焼かれる本体の陶器部分は、鉄分を多く含む蛙目(がいろめ)粘土と呼ばれる笠間焼の陶土と貫入(陶磁器の釉薬の部分にできる細かいひび模様)を用いた作陶家独自の技法が施され、ひとつとして同じものはない。このユニークな「OTO」から流れ出る「音」もまた、唯一無二のものなのかもしれない。(五)

OTO

OTO

デザイン KiBiSi
制作 ITO ATELIER (Kosho Ito)
サイズ 径230×高さ115mm
素材 陶器、ウォールナット
45,000円(税抜)

みつぼしオンラインショップにて近日発売予定

http://www.mitsuboshi-denpo.jp

OTO

この商品は、建築家・隈研吾がプロデュースする「East Japan Project」の一環として開発されたものです。

商品に対するお問い合わせは下記まで

一般社団法人Ejp
(隈研吾建築都市設計事務所内)

東京都港区南青山2-24-15 青山タワービル12F

03-5771-7577

http://e-j-p.org

http://e-j-p.org/message-from-kengo-kuma/

釡浅のステーキナイフ

ステーキの味を変える
ダマスカス模様の“切れモノ”

 ブレード部分を走る微細な木目状のダマスカス模様。ハンドルには滲んだ雨滴のようなパターンが焼き付けられた美術品と見まごうばかりのナイフ。明治41年創業、合羽橋の料理道具店『釜浅商店』が、このオリジナルのステーキナイフで目指したものはしかし、あくまで実用である。製作を依頼したのは日本有数の庖丁の産地・岐阜県関市でもその名を世界に知られるナイフ作家・増井紘昭率いる『ヒロナイブズ』。海外では“HIRO”ブランドとして知られ、世界のナイフマニアたちを虜にするナイフメーカー。

 料理の味を左右するテーブルナイフの切れ味は、プロの料理人のみならず料理を味わう人にとっても大切な要素。庖丁と同じステンレス系高級鋼材を熟練の職人が刃付けを行い、鋭い切れ味を実現。庖丁と同じように、研いで繰り返し使うことができる。厚みのある赤身のステーキとの相性は抜群である。

 特筆すべきは、そのフォルム。世界中のソムリエが憧れるシャトー・ラギオールのソムリエナイフにも似た優美なカーヴと、日本刀のような刃先の反りと鈍い輝きを放つ刃紋。「日本の伝統文化と現代のハイテクノロジーとの融合」で共鳴したふたつの企業のものづくりの精神が宿った「用の美」は、世界で通用する新たな輸出品でもある。(鈴)

釡浅のステーキナイフ

釡浅のステーキナイフ

サイズ 全長230mm×幅26mm×厚み4mm
重量 100g 素材:V金10号(ステンレス系)
製造 ヒロナイブズ(岐阜県関市)
12,500円(税抜)オリジナルギフトボックス入り
*限定入荷品のため予約受付中
  • ※ナイフを包む薄紙には丸重製紙企業組合の美濃和紙を使用
  • ※食洗機使用不可 ※刃先が鋭いため取り扱いにはご注意ください

釡浅のステーキナイフ

お取り扱い先:

釜浅商店

東京都台東区松が谷2-24-1

営業時間:10:00~17:30 無休(年末・年始を除く)

03-3841-9357

http://www.kama-asa.co.jp/

Birdy デキャンタ

「パー」のひとつ上を目指す
“バーディ”のブランド哲学

 「BIRDY.(バーディ)」は、愛知県豊田市の自動車部品メーカー『横山興業』の独自の研磨技術を背景に誕生した、プロ向けカクテルツールを製造するファクトリーブランド。そのブランドが新たにスタートさせたテーブルウエアのライン「BIRDY. TABLE(バーディ テーブル)」から登場した新製品「Birdy デキャンタ」は、まさに画期的なプロダクトといえるだろう。

 キッチンを見回せばステンレス製の道具は多いが、ステンレス製のデキャンタと聞いてもいまひとつピンとこない。それもそのはず、この試みは世界的にも類を見ない。それを可能にしたのは、0.1ミクロンもの精度で容器の内側を研磨するという、日本のメーカーならではの精密な特殊加工技術と熟練の職人あってのこと。微細な気泡を生む最適な容器のなめらかさが、ワインに含まれるタンニンの渋みをおさえ、味をまろやかに、また香りを華やかに変化させるのだという。

 デキャンタの素材で一般的なクリスタルガラスの表面にはミクロの凹凸があり、スワリング(ワイン回す仕草)をした際に、その凹凸がワインの粒子を留まらせ、香りを立たせる効果があるとされる。その考え方を金属素材に移し替えた発想こそこの新製品のキモ。ワインを飲む直前にグラス1~2杯分を注ぎ、10~20回スワリングするだけで味をまろやかにする「時短デキャンタージュ」が実現する。(鈴)

Birdy デキャンタ

Birdy デキャンタ

Birdy デキャンタ

サイズ 高さ148mm×径93mm
重量 260g 鋼材:ステンレス
製造 横山興業(愛知県豊田市)
16,800円(税抜、メーカー希望小売価格)

BIRDY.公式オンラインショップにて先行発売

http://birdy.shop

Birdy デキャンタ

商品に対するお問い合わせは下記まで

横山興業(商品企画室)

0565-58-5558

http://www.yokoyama-co.com

MAGONOTTE

彫刻のような孫の手がもたらす
至福の一瞬

 北アルプス立山連峰を望む富山県高岡市の鋳物メーカー『タカタファクトリー』が取り扱う素材は、業界最多の6種類。銅、真鍮、洋白(ニッケルシルバー)、アルミに加え、自社オリジナルブレンドの超抗菌性錫やジュラルミンを精製するなど、さまざまな素材を精錬し、3Dプリンターやレーザーといった最新鋭機器で伝統技術をミックスする。かたや『プルーフオブギルド』は名古屋で結婚指輪、婚約指輪のオーダーメイドを手がけるショップ。そのジュエリー制作ならではの精緻な原型造形技術と、『タカタ』の高度な鋳造技術・研磨加工技術がコラボしたのはなんと「まごのて」。高純度鋳物とポリッシュが、キラリと光る美しい肌目。オートクチュールのように細部までこだわった意匠。手仕事の技を感じさせる硬質なデザイン。フラミンゴと馬をモチーフとしたアルミならではの軽やかでエレガントな触感は、まさに「痒いところに手が届く」。(五)

MAGONOTTE

MAGONOTTE

サイズ 全長440mm×幅25mm×厚み55mm
素材 AC7A 高純度アルミ鋳物
カラー ヘアラインポリッシュ
製造 高田製作所(富山県高岡市)
15,000 円(税抜)

お取り扱い先:

コトモノミチat TOKYO 青山本店

東京都港区南青山5-2-16 青山フレックスA

営業時間:11:00~19:00 不定休

03-6427-6648

http://store.coto-mono-michi.jp/?pid=93998284

SAMURAI-IN

SAMURAI-IN

SAMURAI-IN

「印を捺す」行為を厳かに
デザインした一生モノの印鑑

 「空気以外なんでも削ります」の言葉にたがわず、純チタンなど難削材(なんさくざい)の高精度加工や「丸物加工」が強みの三重県四日市市の『中村製作所』。その業界屈指の金属加工メーカーのクリエイティブブランド「MOLATURA(モラトゥーラ)」のヒット商品が、カスタムメイドのチタン製印鑑「SAMURA-IN(サムライン)」である。

 「覚悟を決める時、人には何が必要か」という大向こうを唸らせるキャッチコピーが示すように、礼節を重んじる武士道文化に想を得てケースは刀の鞘の形をイメージし、大切な場面に向き合う心を引き締める。印面は、注文主の名前に合わせ一つひとつオリジナルの印影が作成でき、シンプルながら量感もあり、押しやすさも考慮されている。

 ご存じのように素材のチタンの堅牢度は抜群。耐久性に優れ、摩耗・欠け・錆びなども発生しない。また金属アレルギーなどを起こしにくく、抗菌・殺菌効果があり医療の現場でも使用される。印鑑の形は凹凸の2種類、カラーも10種類から選べる。着色は塗装加工ではなく「酸化皮膜」および「イオンプレーティング」という特殊な技法が用いられ、使い込むことで独特の風合いが生まれ、一生モノとなる。(五)

SAMURA-IN

SAMURA-IN

素材 チタン
実印 48,000円(税抜)径18×全長60mm
銀行印 38,000円(税抜)径15×全長60mm
認印 29,000円(税抜)径12mm全長60mm
製造 中村製作所(三重県四日市)

お取り扱い先:

SAMURA-IN公式ウェブサイト

http://samurain.jp/

2017.04.04

この内容に興味がありましたか?