Event Report

SAKE COMPETITON 2024 表彰式

日本の食文化と若い造り手を今年も応援

2024年6月12日開催

"世界一美味しい市販日本酒"が決まる品評会「SAKE COMPETITION」が今年も開催された。
今回はこれまでの「純米酒」「純米吟醸」「純米吟醸」「純米大吟醸」「SUPER PREMIUM」のメイン4部門に、海外で製造した日本酒を対象とした「海外出品酒」を加えた5部門。

表彰式は、2024年6月12日、東京・日比谷の『ザ・ペニンシュラ東京』ザ・グランドボールルームで行われた。エントランスに並んだ各部門受賞酒。

今年度も総出品酒を1000点とした審査は、予審、決審と2日に分けて行われ、全国の技術指導者、蔵元、日本酒業界で活躍する有識者で結成された22名の審査員が、完全ブラインドの状態でテイスティングするという厳正な環境で実施された。

決審を終えた実行委員長の『はせがわ酒店』の長谷川浩一氏に、今年の審査での総合的な印象について伺った。
「私はこの業界に入って四十数年になりますが、今年は高温障害などが原因で、かつてないほど米の出来が最低でした。『米が溶けない』という声が聞こえてきましたが、造り手の皆さんが一番苦労されたと思います。

実行委員長の『はせがわ酒店』代表の長谷川浩一氏

それを技術でカバーされたことで、例年と変わらない出来のものが揃っていました。その中でも、まだ知られていないお酒が選ばれ、注目を浴びることにこの品評会の面白さを感じています。味の傾向としては甘さの強い酒が多い印象でしたが、食中酒として、個人的には甘さを控えていただきたいと思います」

審査員の『磯自慢酒造』取締役・製造部長の山田英彦氏

品評会が行われることで酒のトレンドが把握できるのだが、審査員の一人である静岡県『磯自慢酒造』の山田英彦氏も同じような見解を述べた。
「全体的にはバランスのいいお酒が揃っていましたが、甘い方向に振れたお酒が多かったと思います。ただし、甘さで勝負するのではなく、グルコースやアミノ酸など、さまざまな種類の甘さがある中で、旨みの中に甘さが乗ったような、味にふくらみがある酒には、いい評価をさせていただきました」

審査員の『新澤醸造店』代表の新澤巖夫氏

同じく審査員の一人、宮城県『新澤醸造店』の新澤巖夫氏も異口同音ながら、ある傾向について語ってくれた。
「ガス感を感じるお酒が圧倒的に増えている印象です。泡は瞬間的な味わいですが、発酵中のガスを品よく、うまく閉じ込めたものもあれば、ガスをあえて強調したものもあって、その技術の差は明らかになっています」

こうしたわずかな違いを味わい分ける審査員たちによるハイレベルな審査を経て、その中から「純米吟醸部門」の1位に輝いた「楽器正宗 愛山 中取り」の蔵元、福島県『大木代吉本店』は、「純米酒部門」にも「楽器正宗 純醸」が選出され、新設された最優秀蔵元賞も受賞。代表の大木雄太氏が表彰式の挨拶で、これまでの努力が実った感慨を述べた姿は印象的だった。

〈ダイナースクラブ若手奨励賞〉に輝いた「究極の食中酒」がコンセプトの「伯楽星 特別純米」

そしてダイナースクラブ若手奨励賞には、「純米酒部門」2位の「伯楽星特別純米」の醸造を手がけた『新澤醸造店』の杜氏、渡部七海氏が選ばれた。渡部氏は現在28歳。19歳で入社し、わずか3年目で杜氏に抜擢された逸材。その決断をした前出の新澤氏は今回の入賞について次のように述べた。

わたなべ ななみ|1996年生まれ。東京農業大学短期大学部の醸造学科を卒業。入社3年目の2019年、22歳で杜氏(醸造責任者)に抜擢される。2023年南部杜氏の資格を取得。

「今回の品評会では審査員の立場から申し上げても、(出来の)悪いお米をどう扱うかということの、修正能力のスピードが速い蔵が上位に入っています。トレンドに合わせて造ったお酒よりも、蔵の力がそのままダイレクトに出たお酒が選ばれているのではないでしょうか。弊社の渡部は造り手として、トレンドを凌ぐある種の勢いがあって、技術はもちろんのこと、味にその勢いが乗っているという感じですね」

杜氏として5年目の渡部氏は今後の造りで何を目指しているのだろうか。
「今年のようにお米が難しい年は特に、一つひとつの気づきが大事だったことを実感しました。私たちは"究極の食中酒"というコンセプトでお酒を造っているのですが、これからもこの思いを大切に、毎年アップデートしていきたいですね」
この若き杜氏の感性から生まれる酒造りについては、今後も注目していきたい。


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    日本の食文化と若い造り手を今年も応援。日本で最初のクレジットカード、ダイナースクラブカード。