懐石 瓢樹
茶席さながらに四季の風情が生きる京懐石
文・岩朝奈々恵(アリカ)
写真・マツダナオキ
Text by Nanae Iwasa(Arika Inc.)
Photographs by Naoki Matsuda
暖簾の奥に広がる凛とした空間
京都のオフィス街を貫く烏丸通から六角通を西へ。古い日本家屋とマンションが混在する住宅街の一角に、白い大きな暖簾を掲げる一軒の屋敷が佇んでいます。そこが、京料理店『懐石 瓢樹(ひょうき)』。
大正10年(1921年)の創業以来、茶席で重んじられてきた“四季の風情”を大切にした味を守り続け、茶華道家元をはじめとする名家の用を長く務め、京都の人々に愛されてきた名店です。堂々たる風格の屋敷に足を踏み入れると、街の喧噪から切り離されたような心地よい静寂が穏やかに迎えてくれます。
情趣溢れる邸宅で至福の時を
この屋敷は大正期に建てられたもので、明治から大正にかけて活躍した四条派の日本画家・今尾景年の元邸宅。国の重要文化財に指定されており、今では稀少となった屋久杉の梁や柱、景色に独特の歪みを与える窓ガラスなど、建築の隅々より感じる風情からは、繊細な筆致で知られた景年の画風ともどこか通ずる品格を感じます。
折々に応じた掛け軸や、主人自ら生ける花などが彩る客室が臨むのは、庭石と木々の配置が安らぎを醸し出す、清々しい苔庭。庭のつくばいに落ちる水音に耳を傾けながら、京の感性に彩られた料理を味わうのは、非日常を感じる安らぎのひとときです。
素材を重んじ、生かす
大正10年(1921年)、祇園で料亭として暖簾を揚げた『懐石 瓢樹』。昭和7年(1932年)、東山三条に移転したのちは仕出し店として、数多のお茶屋や寺院に料理を提供してきました。その後、縁あって現在の屋敷と出合った3代目主人・西村誠さんは、平成13年(2001年)にこの地で再び料亭を開店。ここでは、訪れる人の視覚・味覚の両方に訴えかける料理が供されます。店名にちなんだ瓢箪の盆に盛られるのは、目にも鮮やかな八寸。名物「半熟たまご」のほか、「めいもと芹の胡麻和え」の小鉢や、板うに、青唐辛子、いかの黄身焼きを刺した青竹の串など、季節の食材を生かした一品が繊細に盛りつけられます。「食材が持つ美味しさを邪魔しないよう、味付けは必要な分だけ、そっと」という信念の下に生み出される料理は、無駄を極限まで削ぎ落とした、洗練された味わいです。
料理、空間、そして心
“ほんまもん”を見抜く人々によって、質の高い食材が集められる京都。『懐石 瓢樹』でも京都を中心に、天然ものの季節の魚、なるべく自然に育った露地物の京野菜、そして、選りすぐりの乾物や調味料をじっくり吟味して仕入れています。そんな素材の味を生かしきるように、豆腐としめじに柚子を搾り、昆布を器にして具材とともに火にかけた「豆腐としめじの昆布焼き」は、ゆっくりと滲み出す出汁の風味が味わい深い、馴染みのお客にのみ出されてきたお品書きにはない一品です。
今回は特別に、このとっておきの品をダイナースクラブ会員様にも堪能していただけます。「素材の持つ五味が器や人の心と調和した時、ものすごい力が生まれます」と西村氏。互いを引き立て合う料理としつらい、そこにもてなしの心が加わり、調和のとれた世界が完成するのです。
懐石 瓢樹
京都市中京区六角通新町西入ル北側
営業時間 | 11:00~14:30/17:00~21:00 | |
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定休日 | 水曜・第3火曜 | |
お料理 | 芳庵 7,865円、ミニ懐石 10,000円、懐石料理 13,310円~(税込、サービス料10%別) 昼のみ 樹点心 3,872円、花遊膳 5,445円(税込、サービス料10%別) |
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お席 | 客室5室(4~16名様) |
075-211-5551
- ※ご予約の際は、ダイナースクラブ ウェブサイトをご覧の旨、
お伝えください。
2016.05.23