Ristorante STRADA
(リストランテ ストラーダ)
京都イタリアンの先駆者が魅せる
素材にひたむきな“王道”の美食
文・岩朝奈々恵(アリカ)
写真・伊藤 信
Text by Nanae Iwasa(Arika Inc.)
Photographs by Makoto Ito
古都にイタリアンを根付かせる
京都の町を東西に走る御池通。鴨川にかかる御池大橋から、背の高い並木が続く歩道を西へ歩くこと約5分、重厚な石壁が目を引くリストランテが現れます。ここは、約45年にわたって京都のイタリア料理界を牽引し続けるオーナーシェフ・福村賢一氏が、2005年にオープンした『Ristorante STRADA』です。
懐石やおばんざいなど和食のイメージが強い京都ですが、イタリア料理店の数は全国4位。古都にイタリアンが根付くきっかけを作ったと言われるのが、1973年に福村氏がオープンしたレストラン『フクムラ』でした。その後、京都市内で複数のイタリア料理店を手がけた福村氏。今の『STRADA』には、その本場仕込みの確かな腕に惚れ込んだ何十年来の常連客が多いとか。
和食に相通じる「素材を生かす」心
70回以上もイタリアを訪れ、現地の味を会得した福村氏。それは、国による派遣が始まりでした。ローマの名店『チェレスティーナ』でファッツィ・マルチェロ氏に師事した福村氏は帰国後、故郷の京都で、当時まだなじみの薄かった本格的なイタリア料理店をオープンしました。
「京料理とイタリアン、一見全く違って見える2つの料理ですが、相通じるところがあります。それは、出汁とソースが持つ役割。どちらも料理を引き立てる脇役でいて、素材の味を生かすも殺すもこれ次第という大事な存在です」と福村氏。
取材時に出してくれた「氷室産天然なめこのパスタ」は、にんにくとバター、フレッシュなオリーブオイルを大ぶりの原木なめこに絡め、その風味と香り、食感をみごとに生かしたソース仕立て。「料理とは素材の味を生かすため、最小限の手を加えること。素材を最大限生かす味わいを追求すれば、イタリアンは必ず京都の人々に受け入れられると考えました」。
◆畑で生まれる
“今日おいしい”メニュー
素材本来の味を何より重んじる福村氏は、そのこだわりから京都市北部の鷹峯や、さらに山深い氷室などに畑を設け、自らや家族、友人が栽培した野菜を料理に使っています。福村氏が子どもの頃から親しんでいた京都の野菜の本当のおいしさに、多くの人に触れてほしいとの想いから自家栽培を始めたと言います。
「畑に出ていると、その野菜の旬を直に感じます。そして、その一瞬を逃さず一番おいしく食べる方法をわくわくしながら模索する。だから、僕のメニューは畑で生まれるんですよ」
◆たどり着いた“自家製”尽くし
『Ristorante STRADA』では野菜だけでなく、生パスタも自家製にこだわっています。福村氏が店を始めた当時は、現地と同品質の生麺が簡単に手に入らなかったため「だったら納得するものを自分で」作ることを決意。以来改良を重ね、生麺ならではのつるりとした舌触りとむっちりとした歯ごたえが独特のリングイネを完成させました。
そんな自慢のパスタを使い、30年以上提供し続けている一品「パルミジャーノ」。臼のようにくり抜かれた巨大なパルミジャーノチーズの表面を客の目の前で削り、茹でたての麺を入れて手早く和えるシンプルな一皿です。濃厚なチーズと存在感のある太麺が程よく絡み、素材のコクや香りをストレートに堪能できるこのパスタを愛する人は多く、ひと塊のチーズがおよそ1か月でなくなってしまうとか。
テーブルを華やかに彩るオードブルのうち、鴨やサーモンの燻製、生ハムまでもが自家製。自分の舌で納得するまで追求を怠らない、福村氏の実直な思いが皿の上に表現されています。
一途に、真摯に、素材と向き合って生まれるイタリアンは、ごまかしの利かないまさに“王道”の味。奇をてらわないからこそ感じられる、本物の京都イタリアンは今日も京の人々の舌を満たしています。
Ristorante STRADA
京都市中京区柳馬場北東角 御池通
営業時間 | : | 11:30~14:00(L.O.) 17:30~21:00(L.O.) |
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定休日 | 月曜・第4火曜 | |
お料理 | ランチコース ¥1,600~(税・サービス料別) ディナーコース¥4,400円~(税・サービス料別) |
*2016年12月5日公開の「京のグルマンが愛する店」の「Jumelles29」も併せてご覧ください。
2017.02.06