古都 夏の味土産

梅雨が明ければ、祇園祭、五山の送り火と、祭や行事が目白押しの古都・京都。
大いににぎわいをみせる夏の京都には、鯖寿司から新感覚のスイーツまで、
この時期ならではの味覚も数多くそろう。
歴史や涼感あふれる品々を、旅の思い出に。

文・堂下まみ子、アリカ 
写真・石川奈都子

Text by Mamiko Doshita, Arika Inc.
Photographs by Natsuko Ishikawa

涼やかな甘味を竹の香とともに

鍵善良房「甘露竹」

鍵善良房「甘露竹」

 江戸中期・享保年間の創業以来、京都の花街・祇園で京菓子を作り続ける『鍵善良房』。祇園という場所柄、お茶屋や芝居小屋に出入りする文人墨客や旦那衆、花街の女性たちにも好まれてきた。

 「鍵善」の代名詞とも言われる「くずきり」とともに、夏にこそ味わいたいのが清々しい青竹に水ようかんを詰めた「甘露竹(かんろたけ)」。口を包んだ笹のフタを外し、添えられたキリで竹筒の裏に穴をあけると、ようかんがつるりと飛び出すしくみ。表面に露を結ぶほどに冷やして、まずは目でその涼やかさを味わう。口に運べば、なめらかな食感とコクのある甘みに笹の香が寄り添い、しばし暑さを忘れさせる。五感で涼を楽しむ、職場や気の置けない友人にも喜ばれそうな和菓子だ。

京菓子の伝統が息づく進化形の甘味

Satomi Fujita by KAMEYA YOSHINAGA
「あんみつ・ミツマメ」

 代表銘菓・烏羽玉(うばたま)で知られる老舗京菓子店『亀屋良長』が、2010年に立ち上げた新ブランド「Satomi Fujita by KAMEYA YOSHINAGA」。フランスの2つ星レストランでシェフパティシエを務めた藤田怜美とのコラボレーションにより、和菓子の伝統に洋菓子のエッセンスを加えたスイーツを供する。

 日本の伝統的な夏菓子であるあんみつとみつまめもその手にかかれば、スイーツ好きの目を奪う一品に変身する。ホワイトチョコを使ったミルクムースと大納言の粒あんを、宇治抹茶と波照間島産黒糖の寒天でやさしく包んだ、2種類の「あんみつ」。白い求肥とみかんゼリーを寒天の中にとじ込めた「ミツマメ」。見た目と味のギャップが楽しい新感覚のキューブを囲めば、いつもとは違う会話が弾みそうだ。

京のハレの日を彩る寿司を味わう

いづう「鯖姿寿司」

いづう「鯖姿寿司」

 京都では、祝い事や祭の日に欠かせないもてなし料理として登場する鯖寿司。かつては家ごとに作られる家庭の味であったものを、初めて料理人の味として売り出したと言われるのが祇園の『いづう』だ。以来この老舗の「鯖姿寿司」は、古伊万里などの器に盛り付けられ、花街でお茶屋遊びを楽しむ人々の小腹を満たす粋な味として愛されてきた。

 適度に脂ののった日本海近海の真鯖を酢などの調味液に漬け込み、昔ながらの氷式冷蔵庫で一晩寝かせる。ほのかな甘みとサラリとした口あたりが絶妙な酢飯と合わせ、北海道産の真昆布で包み込む。今も昔も変わらぬ丁寧な手仕事から作られる一品は、昆布の旨みが程よくしみた数時間後はもちろん、旨味の増した翌日の味も格別。伝統が息づく京の「ごちそう」は、大切な人への贈り物にも最適だ。

古都の夏に欠かせない鱧の旨味

茨木屋「魚そうめん詰め合わせA」

茨木屋「魚そうめん詰め合わせA」

 三方を山に囲まれ海から遠い京都では、若狭でとれた一塩(ひとしお)ものと呼ばれる魚やかまぼこ、竹輪といった魚介の加工食品が発達した。1869年(明治2年)創業の『茨木屋』は、この京ならではの味を守り続けて140余年の、伝統ある老舗蒲鉾店だ。

 京の町に祇園囃子が流れるころ、夏の味として欠かせないのが「魚そうめん」。鱧料理と共に料理店や家庭の食卓を彩る風物詩だ。この「魚そうめん」と合わせた鱧づくしのセットは、京都人の間でも夏の贈り物として人気を誇る。「鱧魚羹(はもぎょかん)」や「鱧しんじょう」、柚子味噌入りの「笹衣(ささぎぬ)」など、新鮮な鱧だけを練り上げた、夏ならではの贅沢な詰め合わせ。鱧の旨味が存分に味わえる京都ならではの夏の味覚を、グルメなあの人に贈りたい。

涼を運ぶ生ゆばのフルコース

湯葉弥「生ゆば詰合せ MX」

 精進料理の食材として、千年以上前に中国から伝えられたといわれるゆば。1830年(天保元年)創業の専門店『湯葉弥(ゆばや)』には、厳選された国産大豆と清冽な地下水を使い、熟練の職人が手作りするゆばが豊富にそろう。

 ゆば好きはもちろん、なじみのない方にもぜひおすすめしたいのが、生ゆばの多彩な味わいが楽しめる「生ゆば詰合せ MX」だ。凝縮された大豆の旨味ととろけるようになめらかな口あたりがたまらない「くみあげ湯葉」、やさしい大豆の風味が楽しめる「生小巻ゆば」、銀杏、ゆり根、きくらげを包んだ「ゆば衣」など、5種類の変化に富んだ味わいは「精進」のイメージを一変させる。ひんやり冷やせば、口の中にふわりとろりと心地良く涼を運んでくれる生ゆばで、グラス片手に贅沢な夏のひとときを満喫してみては。

彩り豊かな「花畑」に思わず歓声

花梓侘「つまみ野菜の花畑」

 賀茂川にほど近い閑静な住宅街に佇む『花梓侘(かしわい)』は、季節変わりのてまり寿司「つまみ寿し」(写真右上)で知られる料理店。この「つまみ寿し」に合うおかずが食べたいという声に応え、2017年の春から新たなテイクアウトメニューとして「つまみ野菜の花畑」が登場した。

 その名の通り、地元の旬の野菜を中心に季節替わりの10種のおかずが詰められる。この日は、切干大根やひじき煮、汲み上げ湯葉といったおばんざいのほか、貝柱と赤キャベツのマリネ、焼穴子など。食感も彩りも多様な料理はどれも薄味に仕上げられ、日本酒やワインとの相性も抜群。フタを開けた瞬間の笑顔が楽しみになる、華やかな一品だ。

鍵善良房

鍵善良房

京都市東山区祇園町北側264

営業時間 9:00~18:00
(喫茶は9:30~17:45L.O.)
定休日 月曜(祝日の場合は営業、翌火曜休)

亀屋良長

亀屋良長

京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19

営業時間 9:00~18:00
定休日 無休

いづう

いづう

京都市東山区八坂新地清本町367

営業時間 11:00~23:00
日曜・祝日11:00~22:00

※お土産は予約の場合8:00~(木戸口にて)

定休日 火曜(祝日の場合は営業)
鯖姿寿司のお土産のみ
火曜11:00~15:00まで販売

茨木屋

茨木屋

京都市中京区寺町三条上ル

営業時間 10:00~18:00
定休日 水曜(祝日の場合は営業)

湯葉弥

湯葉弥

京都市下京区中堂寺庄ノ内町54-6

営業時間 8:30~17:30
定休日 水・日・祝不定休

花梓侘

花梓侘

京都市北区上賀茂今井河原町55

営業時間 9:00~18:00
定休日 水曜
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2017.06.13

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祗園祭、五山の送り火と祭や行事で大いににぎわう夏の京都。定番からひとひねり利いた進化系まで、この時期ならではの京の味覚を旅の記念に贈ってみたい。