音楽アウトリーチ活動の様子をレポートいたします。
横浜市戸塚高等学校は、音楽コースをもつ高校で、しかも吹奏楽部は全国レベルの強豪校である。その戸塚高校の音楽コースの生徒と吹奏楽部の部員たちを対象に、トロンボーンの佐藤健一をリーダーとした若手演奏家たちが、吹奏楽の指導とコンサートを展開した。コンサートでは、演奏家と吹奏楽部員たちがジョイントして合同演奏も行った。生徒たちにとって、身近で共演できるということは、何よりもの貴重な経験となったにちがいない。
邦楽科大学院博士課程の村澤丈児は、郡山第二中学校の出身である。その母校において、村澤自身が指導者となって、第5校時は中学生に箏の指導と生演奏を行った。その指導ぶりを郡山市の小中学校の音楽科教員が参観し、続く第6校時では、今度は音楽科教員を対象に村澤君が和楽器講座の指導を行った。郡山市教育長や教育委員会の指導主事らも参観する大規模な講座となった。
中野亜維里(ソプラノ)と大嶋美帆子(ピアノ)によるスクールコンサート。幼馴染の2人は、途中のプロセスは異なったが、東京藝大の大学院でまた一緒に学ぶようになった。息の合った演奏と子どもに優しく語りかけるMCで大変盛り上がったコンサートになった。演奏はもちろんであるが、特に女子児童たちにとっては、2人のドレス姿もとても印象深かったようである。
3月3日、卒業式や終業式を迎えた年度末の横浜市立西中学校で、1年生と2年生の学年全体の歌唱と合唱のワークショップを合唱指導者の黒川和伸が行った。巧みな指導言と歌声の迫力に導かれて、西中生徒も次第にノリノリになって発声と合唱曲づくりに取り組んだ。
3月13日、宮城県栗原市にある築館高等学校の2年生を対象に、黒川和伸が歌唱・合唱のワークショップを行った。築館高校では、生徒たちが中心となって作詞と作曲を手掛け、復興や未来に向けた自分たちの歌づくりを進めている。その合唱編曲された曲の歌い方と基本的な発声について指導が展開された。ユーモアあふれる、かつ熱い指導によって生徒が生き生きと歌唱活動に取り組んだ。
病院関係者が集うパーティー会場において、日本音楽(津軽三味線と邦楽囃子)のコンサートを行った。津軽三味線の山下靖喬は、全国大会一位をもつ、日本を代表する若手奏者である。トークも抜群にうまい。石森裕也は、太鼓の即興演奏をはじめ、笛、太鼓での古典、ならびに民謡・祭り系もこなせるマルチなプレーヤーである。彼らたちのオリジナル作品である「響炎」をはじめ、津軽三味線の名曲の数々が多くの聴衆を魅了した。
打楽器奏者は、永野雅晴(東京藝術大学大学院)と桜井愛姫(東京藝術大学卒業)の2人。大阪府北河内地区の音楽教員対象の打楽器アウトリーチである。各種の打楽器の基本奏法の指導、楽器のデモンストレーションも兼ねたミニコンサート、さらには、参加者全員による打楽器合奏という盛りだくさんの内容。100名を超す参加者があり、2人の指導者だけでは大変な一面もあったが、機転を生かした臨機応変な対応で、実り多い研修となった。
サックスカルテットRev(上野耕平・宮越悠貴・都築惇・田中奏一朗の4名)による熊本での復興支援は、「くまもと音楽復興支援100人委員会」の要請で、2日間で計4ヵ所において演奏を披露した。今回は、まだまだ復興途上の阿蘇地域まで足をのばした。場所によって聴衆の数に相当の差があったが、カルテットメンバーは常に一生懸命素晴らしい演奏を披露してくれた。
なお、7月5日、6日には、やはり同じように「くまもと音楽復興支援100人委員会」の要請を受け、中学時代を熊本で過ごした、フルーティストの有田紘平が音楽仲間とアンサンブルを組んで3ヵ所でコンサートが行われた。
長野県立高遠高等学校は、普通科芸術コースを設けている高校である。今回は、芸術コースの生徒に福祉コースの生徒も加わって、田村桃子(フルート)と松本佳子(ピアノ)による演奏&ワークショップを体験した。2人は、演奏はもちろんであるが、トークや生徒との関わりが素晴らしく、高校生の目線でさまざまな質問に対して丁寧に答えていたのが印象的であった。
まどか幼稚園には、いろいろな楽器のコンサート&ワークショップのアウトリーチを受け入れてもらっているが、今回は、初めての試みで、ヴィオラ奏者の高橋梓と市川友佳子の協力を得て、当日午前の「自由保育」の時間に「ヴィオラ」の部屋を設け、子どもが自由に鑑賞したり、演奏に合わせて童謡などを歌ったりできる環境をつくり上げた。予想以上に子どもたちは鑑賞に参加し、たなばたが近いこともあって、「たなばたさま」の歌をヴィオラに合わせて何度も繰り返し歌っていた。活発に屋内外で運動している自由保育の時間に、ゆったりできる空間と音楽環境をつくる試みは、幼児の音楽教育を研究する上でも貴重な取り組みになると考える。
秋田市立下浜中学校は生徒数34名の小規模校で、部活動も体育系は野球部のみ、文化系は吹奏楽部のみという学校である。朝一から隣の下浜小学校の児童、さらには地域の住民も加わって、上野耕平のサックスと黒岩航紀のピアノの演奏に聴き入った。さらに、小規模の吹奏楽部でサックス担当は2人の生徒が、あこがれの上野耕平から呼吸法や奏法のアドバイスをもらい、感動の時間帯となった。学校長(小林秀雄先生)が音楽で、吹奏楽の指導は若い講師が担当しているが、大変細やかな指導で、少ない人数ながらもコンクールで地区大会を突破して、県大会にまで進んでいる。野球部の生徒たちも聴く態度が素晴らしく、機会があれば、またぜひ訪れたい学校である。
8月25日、山下靖喬(津軽三味線)と石森裕也(邦楽囃子)が、伊那市の社会福祉協議会デイサービスセンターくつろぎの家において、邦楽器によるワークショップとコンサートを行った。車いすの高齢者が中心であったが、コンサートの中間部で、みんなで三味線とお囃子の伴奏で全国各地の民謡を歌ったときなど、精一杯大きな声で歌い、手拍子を打っていた。演奏家にとっても貴重な体験となった。
翌26日、2人は、宮城県栗原市に移動。東北新幹線のくりこま高原駅前に設営された会場で、多くの市民を対象に津軽三味線と太鼓、篠笛の演奏を披露した。2人の演奏と小気味よいトークで会場は大いに盛り上がった。地域活性化や地方創生につながるこのようなアウトリーチ活動を今後広げていきたい。
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26日朝の飛行機で羽田空港から大館能代空港へ。まず午前に、北秋田市立合川中学校において、上野耕平(サックス)と黒岩航紀(ピアノ)によるコンサートを実施した。全校生徒及び地域の人たちにも開かれたコンサートである。大盛況のうちに終了し、秋田市へ移動。夕方からは、学校法人ノースアジア大学明桜高校のホールにおいて、市内の他の中高生も参加して、吹奏楽の指導ワークショップとコンサートを実施した。上野耕平のサックス指導は、ソロとアンサンブルの公開レッスンの形で行った。フロアで見学していた吹奏楽の生徒からも数多くの質問がされた。学力全国一位の秋田らしく、生徒たちが自分の言葉で簡潔に質問や意見を述べていたのが印象的である。ワークショップに続いて、ピアノのソロ、サックスとピアノの共演で公開のコンサートを実施。終了後も生徒たちに2人の演奏家は取り囲まれ、予定外のサイン会にまで発展してしまったほどである。
福井県南西部の若狭地区の中学・高校の吹奏楽部員、ならびに一般の高校生を対象に、サックスの上野耕平が単独で指導とソロコンサートを実施した。
11月30日は、若狭町バレアに、若狭町立上中中学校と三方中学校の吹奏楽部約60名を集め、ソロコンサートと指導ワークショップを展開。中学校のサックスパートの生徒たち対しては実際の楽曲を用いた指導、吹奏楽部全員に対しては呼吸法や音楽への関わり方等についてのワークショップを展開した。12月1日は、県立美方高校を訪問し、一般の生徒たちを対象にコンサート、吹奏楽部に対して指導を行った。
川越市には伝統的な祭り囃子がいくつか継承されており、今回はその祭り囃子に取り組む中学生に対し、全国の祭り囃子に詳しい石森裕也(邦楽囃子)が指導とワークショップを2日間にわたり展開した。伝統的な祭り囃子を学ぶとともに、自分たちの学校の祭り囃子を創作しようとする画期的な取り組みである。嬉々として活動する中学生に、伝統芸能の未来の可能性を垣間見た気がした。
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2017年1月~12月に音楽アウトリーチ活動を実施した学生の感想をご紹介します。クレジットカードのダイナースクラブ公式サイトをぜひご活用ください。