Special

目利きが選ぶアレやコレ
第14回:人生最高のプレゼント

イラストレーション・naohiga

人生には時折、思いがけない形でやってくるプレゼントがある。その日その時を特別なものにしてくれる、最高の贈り物。それがもたらすのは形や物を超えた“メッセージ”。目利きたちにやってきた、人生最高のその時を語っていただいた。

01 Takanori NAKAMURA

世界の味を知り尽くす
コラムニスト

中村孝則

作陶家から託された蕎麦茶碗。
使い込んで育てると約束を交わした一品

唐津に村山健太郎君という現代作家がいます。取材で窯元を訪れた際、売り物ではなかった茶器を半ば強引に譲り受けてきたのがご縁で、数年後に再会した時に“育てて欲しい”と蕎麦茶碗を託されました。

焼き物には使い込んだからこそ現れる“雨漏り”(シミ)という経年変化があって、茶人はその様を面白いと見立てる。茶器とは作家も丹精をこめる特別な物で、その一作を託されたことは茶人冥利に尽きました。

新しい茶碗でありながら、年代物にも勝る可能性を秘めた一品。日々、使い込みながら、この茶碗で村山君にいつか一服を、と。人生最高のプレゼントは、そんな時間軸を夢想させてくれるものになりました。

Takanori NAKAMURA

ファッションからカルチャー、ガストロノミーからワイン、シガーまで、幅広くラグジュアリーライフをテーマに執筆するコラムニスト。2013年から「世界のベストレストラン50」、並びに「アジアのベストレストラン50」の日本評議委員長を務める。

Instagram @officedandynakamura

02 Towako KIMIJIMA

奇跡の57歳。
美の未来形を提案するカリスマ

君島十和子

幸運に恵まれたギフトのような家族旅行
同じ景色を共有した大切な思い出

15年ほど前、モナコで仕事を終え、家族で南仏を旅した時のこと。それは、『ホテルメトロポール』の手違いで予約していた部屋がとれておらず、VIP用の最上階の部屋にアップグレードしてもらったことが始まりでした。

バラ園を訪れる、F1のコースを車で走る、グレース王妃のお墓に花を手向ける、行きたかったレストランでランチをとる……やりたかったことがすべて夢のように叶えられていきました。みんなでゆっくりする時間もままならなかった当時、思い切って取った休暇は天候にも恵まれ、家族全員、同じ景色で感動を共有する旅になったのです。

買った物でも、いただいた物でもないけれど、あれは家族にとっての最高のプレゼント、それはつまり、私にとって人生最高のプレゼントだったと思います。

Towako KIMIJIMA

1966年生まれ。モデル、女優を経て、現在はスキンケアブランド「FTC」クリエイティブディレクター。その美しさから、美のカリスマとしてコアなファンを魅了し続けている。今年4月、『アラ還十和子』(講談社)を出版。ライフスタイルから美への姿勢などを赤裸々に綴った内容が反響を呼んでいる。

Instagram @ftcbeauty.official

03 Oscar BREKELL

日本の心をこよなく愛する
スウェーデン人初の日本茶伝道師

ブレケル・オスカル

特別な急須と見知らぬ人からのお守り。
人生には時々、宝物がやってくる

僕の部屋にはとても大事にしているギフトが2つあります。1つは、常滑焼の作家・磯部輝之さんと共に作らせてもらった急須。もう1つは、僕がまだ学生時代、日本茶のインストラクターを目指していた頃に、飛行機で隣り合わせになった日本人の女性からいただいたお守り。

急須は、著名な作家さんと一緒に手作りできるなんて、考えられないぐらいの僥倖でした。どこの神社のどういうお守りなのかもわからないのですが、見ず知らずの人が僕の未来を祈ってくださった、その気持ちを今でも思い出させてくれます。

この価値は自分にしかわからないものかもしれませんが、今の自分の原点を振り返らせてくれるこの2つは、間違いなく人生最高のプレゼントとなっているのです。

Oscar BREKELL

1985年スウェーデン生まれ。日本茶に魅せられ、2010年、岐阜大学に留学。2014年、合格率30%の狭き門と言われる日本茶インストラクターの資格を取得。農林技術研究所 茶業研究センターの研修生などを経て2018年独立、現在は“日本茶の伝道師”として普及に努めている。

Instagram @brekell

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さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は目利きたちの“人生最高のプレゼント”をご紹介。