Special

目利きが選ぶアレやコレ
第5回:心に残るシーン

イラストレーション・naohiga

Illustrations by naohiga

人生の中には大切な思い出の扉がある。行く道を決めたシーン。幸福を噛み締めたシーン。それがなければ“今”を選択していなかったような重要なシーン。3人の目利きの最終回のテーマは、それぞれの心に残るシーン。それがあるから今がある、達人たちの扉の向こうのお話。

01 Mikiko HAYANO

世界で最も予約困難な美容家
早野實希子

人生を決めた、
末期癌患者への最期のマッサージ

英国王室が支援する終末期医療の施設でボランティアをしていた時のこと。牧師様の話を聞きつつ最期の時を待つ女性にマッサージをしたのですが、その方がやがて大粒の涙を流されました。

その時は牧師様のお話で泣かれていたのだと思ったのですが、後日、遺族の方から「小さい頃、辛い時に母に背中をさすってもらったのがとてもうれしかったことを思い出したの。おかげで幸せな気持ちよ」と言葉を残したと連絡がありました。「走馬灯のように幼い頃が蘇り、人生を肯定的に受け止めて逝くことができたようです」と。

これは私がまだ漠然と思い描いていた今の職業を決定づける出来事になりました。施術を通して世界中で多くの人の運命の転換を垣間見ることができました。あの女性との出会いは、私の人生の幕開けのシーンでもあったのです。今でも意義深く感じています。

早野實希子

英国王室御用達医師が主宰するロンドンのサロン『GraceBelgravia』を経て5つ星ホテル『The Lanesborough』にてトリートメントを行う。東京では『Lyvolvant』を主宰。海外セレブからの指名も多数で、世界で最も予約の取れない美容家といわれる。

Instagram:@mikiko_hayano_official_

02 Shimpei KURIHARA

絶対味覚の旨メシ伝道師、超人気料理家
栗原心平

余命宣告を受けた父が見せてくれた背中。
男として背筋の伸びる瞬間

心に残るといえば、余命宣告を受けた時の父の姿でしょうか。詳細を聞くので病院に付き添ってほしいと言われ、姉と僕と3人で医師と向き合いました。

父が「あと、いくばくですかね」と聞いたんです。答えは「うまくいけば1年、早くて半年」。自分ならば冷静でいられただろうかと思うシーンでした。けれど父は「それだけあれば十分ですね」と笑ったんです。取り乱すことなく、とっとと死装束を決めたりして。最期の生き様は、同じ男として思うところがありました。

仕事でいえばテレビ番組『男子ごはん』の最初の収録の時。失敗できないという重圧やバラエティ番組の雰囲気に大緊張。一度はレギュラーをお断りしたのですが、僕の出張帰りを待ってプロデューサーさんや国分太一さんが揃って来られて……。うれしかったですよ。男として背筋の伸びるシーンでした。

栗原心平

料理家の栗原はるみを母に持ち、幼い頃から培われた“絶対味覚”でリアルな旨メシを伝授する超人気の料理家。マネジメントで携わる津々浦々の店舗やメディア出演等で全国を飛び回る。

Instagram:@shimpei_kurihara

03 Ryuji BANDO

元ガンバ大阪、元日本代表の熱血ストライカー
播戸竜二

ガンバ大阪のスタジアムで見た引退の景色。
いい“終わり”と“始まり”の場面だった

天皇杯の決勝ゴールを決めて優勝した時。映画デビューした時。心に残るシーンは数々あるけれど、一番印象的だったのは、2001年にフランス、イタリア、スペインを巡った一人旅ですね。

試合以外では初めての海外で、不安もワクワクもあったのですが、憧れのイタリアの地に降り立った瞬間、まるで故郷に帰ってきたような高揚感が。カプチーノとハムとチョコクロワッサン食べて「これやー!」と(笑)。ミラノダービーの試合を見に行った時は、サッカーも圧倒的だったのだけれど、ファッションも雰囲気も当時の自分に強烈に染み込んだ旅でした。

ずっとサッカー選手になりたくて、その結果、21年間、7つのクラブでプレーをしました。最後は最初に入ったガンバ大阪のスタジアムで、ファンに引退の挨拶ができたことも忘れ難い思い出。いい終わりで、新しい一歩。本当に幸せなシーンでした。

播戸竜二

ガンバ大阪などのフォワードとして活躍し、日本代表にも名を連ねた熱血ストライカー。現在はテレビ等で解説を務めるほか、日本サッカー協会アスリート委員、アスパス!推進チームメンバー、WEリーグの理事を務める。

Instagram:@ryuji_bando

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さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は心に残るシーンをご紹介。