Special
イラストレーション・naohiga
まるで啓示のように胸に響いてくる言葉。「座右の銘」とは、人生の大事な場面にこそ、その先へと導いてくれる道標のようなものではないだろうか。目利きたちの三人三様の座標は、それこそが生き様を示すものだった。
\ 初登場!/
時代を生み出し続ける
ブランドプロデューサー
柴田陽子
「道の真ん中を歩く」。
啓示のように言われた言葉が
今の私の在り方を決めた
まだ20代だった頃、二人の先輩から同じようなタイミングで「君は晴れた道の真ん中を、腕を振って歩いているような人だね」と言われたことがあったんです。それが私の仕事の在り方にストンと合致しました。
かつてブランディングの仕事を担当したお店に久しぶりに行ってみたら、似て非なるものになっていたことがあったんです。その時、自分は一過性のブームではなく、長く続く良いものを作っていきたいと心に決めました。以来、新しいプロジェクトに取り組む際、あるいは問題が起こった時、「このやり方は道の真ん中だろうか」と照らし合わせてみるようになりました。
旅でも着る物でもまずは王道を考える。新しい物を生み出すこととは相反するようにも見えますが、王道を知らなければ横道には行けない。小手先のやり方に迷うことも当然ありますよ。けれど、今まで脇道を選んだ記憶はないんです。この仕事を続けたいと思うのは、まだ不満足なことがあり、もっとやってみようと更なる真ん中を模索するから。不満足が続くかぎりは道の真ん中を切り開いて歩いていたいと思うんです。
Yoko SHIBATA
シカゴ留学後、レストラン開発会社の取締役をへて独立。商業施設等のプロデュースを手掛ける。現在、有限会社柴田陽子事務所代表取締役。多方面にわたりブランドコンサルティング業務を行うほか、アパレルブランド「BORDERS at BALCONY」のデザイナーとしても活躍する。
Instagram @yokoshibatabordersatbalcony
\ 初登場!/
日本のアートシーンを底から支えてきた
三代目・銀座の粋人
日比康造
否定し続けてきたルーツを受け継いだ時からの覚悟。「整頓を以て、混沌をさばく」
『月光荘』は画材屋だけれど、衣類やバッグ、食器、家具に至るまで、すべてをオリジナルで製作している物づくりの店です。新しい物を創作する際の指標が、「整頓を以て、混沌をさばく」というもの。
整頓とは、自分の中の美意識や世界観、引き寄せたい未来のビジョンを明確にすること。そのフィルターを通した上で混沌の中から新しいモノを作り出していく。銀座で代々続く店を継ぐというのは、どの家業であれ背負いきれそうにない重圧を一旦は感じてしまうもの。自分の場合、その重圧の分だけルーツから離れたい欲求が強かった。
国内外で音楽活動を続けましたが、結局ルーツを否定しているうちは何も進まず……胸を張って己の役割を全うしようと決めたのは、ようやく40歳を過ぎた頃でした。そもそも背負えるわけがないんですよ(笑)。けれど、先代の後ろ姿を見て育った自分には、何がしかの教えが備わっているはずと信じて受け継いだ。今でも感覚をアップデートする際、代々の教えは整頓の軸となり、焦らず腐らずやっていくための指標です。
Kozo HIBI
大正6年創業、銀座に100年以上続く画材店『月光荘』3代目店主。店名は、初代と懇意にしていた与謝野鉄幹・晶子が詠んだ歌にちなむ。日本初の純国産絵の具の開発に成功し、オリジナル製品のみを取り扱う世界唯一の画材店としてその名を知られる。トレードマークの「友を呼ぶホルン」は、その音のもとに多くの仲間が集うようにと、与謝野夫妻を中心とした当時の文化人たちが考案したもの。
Instagram @kozohibi
足元から世界を変革する
靴磨きの世界チャンピオン
長谷川裕也
「ルール破ってもマナーは守るぜ」。
歌詞がこれまでの人生を肯定してくれた
路上で靴磨きを始めた頃、東京都のあらゆる管轄機関の扉を叩きましたが、景観を損なう等の理由で営業許可が下りなかった。大道芸ではジャンルが違う。靴磨きをするには、ルールを破らざるをえなかったんですね。だから、仕事が終わったら綺麗に掃除をする、道を尋ねられたらお手伝いをするなど、マナーを守るようにしました。
この座右の銘を見つけたのは、ロックバンド、ザ・ブルーハーツの「緑のハッパ」という歌詞の中。その時、自分のやってきたことが少し肯定された気がしたんです。商品を預かる仕事をしていると、一定数のクレームのようなものが生じます。それを避けるためにルールを作るのは簡単。けれどスタッフに言うんですよ、「それ、良識の範囲で何とかならないか」と。
銀座の定食店で、店員がお客さんのスーツに誤って味噌汁をこぼしたら「あー、ごめん!」とタオルで拭いて、こぼされた方もそれで納得、という場面を見たことがあります。そんなお互いさまの間合いっていいなと。良識ない行動があるからルールは必要になる。ならば、良識で生きていける世の中になればいいと、僕は思うんです。
Yuya HASEGAWA
1984年生まれ。20歳の時に路上から独学で靴磨きをスタート。2008年には世界初のカウンタースタイルの靴磨き店「Brift H」をオープンする。2017年にロンドンで開催された第一回世界靴磨き大会にてみごと優勝。名実ともに世界一の靴磨き職人の称号を手にいれる。著書に『靴磨きの本』など。
Instagram @yuya.hasegawa.brift.h
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