Special

目利きが選ぶアレやコレ
第24回:また食べたい旅先の味

イラストレーション・naohiga

旅先で食べたあの味、あの一皿。それは旅の思い出を強烈に彩るスパイスだ。そのためだけに、また行きたくなる。3人の目利きのそんな珠玉の旅メシをご紹介。

01 Takashi FUKUNISHI

サッカーを科学する
洒落者解説者

福西崇史

新潟で食べたタレカツ。
甘醤油のタレと白飯が
最強の旨さでそそってくる

食べる、見る、土地の人たちと話す。それが僕の旅先での過ごし方。せっかく訪れた場所だから、満喫したいんですね。

なかでも記憶に残るのが食。10分あれば、新幹線の時間とせめぎ合いながらも名物の蕎麦屋に駆け込んでみたりする。探索するのは、主に「B級グルメ」。その中でも一番食べたいものとして即決できるのが、新潟のソウルフードともいわれる『とんかつ太郎』のタレカツです。甘醤油に浸けられたカツが卵でとじずに白飯の上に乗っかっている。

注文の際、「何枚にしますか?」と聞かれ、カツだからそれほど食べられないだろうと控えめに頼んだのだけれど、それがなんとさっぱりとした味で食べられてしまった。東京でもトライしてみたけれど、地元の水で炊いたご飯がよかったのか、やはり新潟で食べた味が一番!甘醤油のタレと白飯が最強の旨さでそそってくる逸品です。

Takashi FUKUNISHI

愛媛県出身。1995年ジュビロ磐田所属。以後、FC東京、東京ヴェルディ等で活躍する。日本代表にもたびたび選出され、日韓・ワールドカップ、AFCアジアカップ 中国大会、ドイツ・ワールドカップ等、国際試合では主軸のMFとして注目された。2009年 現役引退。現在は解説者、サッカー教室、講演会、トークショーなどサッカー普及のための活動を続けている。

Instagram @takashi_fukunishi

02 Kozo HIBI

日本のアートシーンを底から支えてきた
三代目・銀座の粋人

日比康造

初めて訪れた外国の洗礼。
驚きと恐怖と新鮮さの中で食べた
運命のガンボ

19歳の時のことでした。バックパック一つ、音楽への夢と希望と共に降り立ったニューオリンズ。デキシーランドジャズが流れるミシシッピー川沿いで、いきなり靴墨をぶっかけられたと思ったら、満面の笑みで高額の靴磨き料をぼったくられたりして。驚きと新鮮さ、そして恐怖。ニューオリンズで初めて受けた一人旅の洗礼の中、夢中でかきこんだ"ガンボ"の味は生涯忘れることがありません。

ガンボとはフランス語で「オクラ」のこと。とろみがあるシチューのようなもので、米国南部では日常的に食べられる郷土料理。食べた店の名前もまったく覚えてはいないけれど、混沌の中の強烈な体験と共に記憶に残っている味なんですね。

それを共有したくて、月光荘のサロン『月のはなれ』では、馬鹿みたいに時間をかけて丁寧に再現したガンボを提供しているほど。たまに猛烈に食べたくなるのですが、あまりに手間をかけた料理なのでお店の分がなくならないよう、遠慮がちにいただいています(笑)。

Kozo HIBI

大正6年創業、銀座に100年以上続く画材店『月光荘』3代目店主。店名は、初代と懇意にしていた与謝野鉄幹・晶子が詠んだ歌にちなむ。日本初の純国産絵の具の開発に成功し、オリジナル製品のみを取り扱う世界唯一の画材店としてその名を知られる。トレードマークの「友を呼ぶホルン」は、その音のもとに多くの仲間が集うようにと、与謝野夫妻を中心とした当時の文化人たちが考案したもの。

Instagram @kozohibi

03 Yoko SHIBATA

時代を生み出し続ける
ブランドプロデューサー

柴田陽子

一息つくと頭に浮かぶ茶懐石。
素朴なご馳走の中に
豪華さを超えた体験がある

初めて訪れて以来、半年のうちに3回も足を運んでいる山梨県笛吹川温泉『坐忘ざぼう』の茶懐石。茶事の前にお腹を温める意味合いでいただく、いわゆる懐石料理です。昨今、豪華さが目立つようになっている懐石料理が多い中、本来の素朴さを味わうことができるお料理なんです。

最初は、クライアントさまの理解を深めるために仕事で行ったのですが、今ではすっかりプライベート仕様。一息つきたいタイミングにふと頭に浮かぶ味。車で1時間半から2時間、金曜日に出かけて土曜日にゆっくりご飯をいただくのがリフレッシュになっています。

外食の多い中、食べたいものを選べる機会にありがたさを感じることもありますし、負担なく身体が整う料理には、贅沢さを超えた体験をさせてもらえるんです。評判のお店などは知っておかなきゃいけない仕事柄、様々な場所を訪れてはいますが、『坐忘』の茶懐石は自分と向き合った時、また食べたいと思える料理なのです。

Yoko SHIBATA

シカゴ留学後、レストラン開発会社の取締役をへて独立。商業施設等のプロデュースを手掛ける。現在、有限会社柴田陽子事務所代表取締役。多方面にわたりブランドコンサルティング業務を行うほか、アパレルブランド「BORDERS at BALCONY」のデザイナーとしても活躍する。

Instagram @yokoshibatabordersatbalcony

自分の可能性を信じ、未知なる世界を探求するあなたへ。航空会社提携カード、ビジネスカードなど、豊富なラインナップから最適な一枚をお選びいただけます。

Recommends

会員誌『SIGNATURE』電子ブック版 ライブラリ
会員誌『SIGNATURE』電子ブック版 ライブラリ

電子ブック閲覧方法はこちら

さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は目利きたちの“また食べたい旅先の味”をご紹介。