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目利きが選ぶアレやコレ
第29回:人生のターニングポイント

イラストレーション・naohiga

人生には、"転機"といえる出来事が必ずやあるものだ。人との出会い、場所との出合い、あるいは予想を超えたハプニングなど。振り返ってみれば、それは本当に求めていた場所への軌道修正。目利きたちの"現在"にいたる"ターニングポイント"とは

01 Shingo GOKAN

ナイトシーンを魅了する
世界一のバーテンダー

後閑信吾

人生を変えたければ、最初の一歩。
結局、その一歩が未来を切り開いてくれた

人生の転機といえるタイミングは4つ。1つ目は21歳の時、とあるバーの店長を任されたこと。2つ目は23歳の時に単身ニューヨークへ渡ったこと。そして3つ目が29歳で「バカルディ レガシー カクテル コンペティション」で世界一になったこと。

バーテンダー歴数年の若造が店を任された体験は、自分のキャパシティを一気に拡大してくれたし、ニューヨークで"無茶な環境"に身を置いたことは、有無を言わさず視野を広げる結果になりました。世界一のタイトルは夢の達成を超えて、審査員やコンサルなど、カクテルを作る以外の大きなプラットフォームを手にすることになったんです。

一番大きな転機は、31歳、上海に『スピーク・ロー』というバーを開いて独立したこと。それまで自分にしか向いていなかった意識が、スタッフや店のことなど、まるで親が子に注ぐようなものに変わりました。人生に変化を起こしたければ、結局、最初の一歩は自分で踏み出すしかない。けれど、その一歩の先には想像以上の世界が広がっている……。40代となった今は"社会貢献"という、生きている意味への意識が芽生えてきました。この先にどんな転機が待ち受けているのか、楽しみの一つとなっています。

Shingo GOKAN

2012年世界最大規模のコンペティション「Bacardi Legacy Cocktail Competition」に米国代表として出場し、優勝。2017年、バー業界のアカデミー賞といわれる「Tales of the Cocktail」の「International Bartender of the Year」を受賞。「Asia’s 50 Best Bars」では、2019年にバーテンダーが選ぶ「Altos Bartenders’ Bartender」を、2021年にはバー業界を象徴する人物に贈られる「Roku Industry Icon Award」を受賞。最も注目されるバーテンダーである。

Instagram @shingo_gokan

02 Yuko NAITO

愛と熱血で抜群のコミュ力を
発揮するフリーアナウンサー

内藤裕子

九死に一生の出来事。
死を垣間見た体験が生きる姿勢を変えた

2013年のある日、交差点で信号待ちをしていた時でした。直進してきたバイクが右折車と衝突。巻き添えとなり、私も一歩間違えれば、という大事故でした。結局、1カ月ほど休職することになったのですが、その時、人生の一寸先はどうなるかわからないということ、そして人生は一度きりなのだということを痛感させられました。

当時はやりたい仕事が次々と出てきて、時間に追われる日々を過ごし、それなりに充実してもいましたが、ふと人生を見つめ直した時、10年後の自分の姿が描けなかったんですね。もっと違う生き方もあるのではないかと。結局、40歳でNHKを退局しカレー大学院に通い出した私を、夫は突拍子もないことを始めたと感じていたようです。

でも私の中では、あの事故が今まで物事を頭で考えていた人生からもっと感覚的に、本能的に味わえる人生に切り替えるきっかけを作ってくれたと感じています。アナウンサーという仕事は細々とでも続けていきたい。けれど超特急でなくていいのだと。あの出来事は、今まで見落としていた鈍行列車の景色が見られる、そんな人生を歩むチャンスを与えてくれたのでした。

Yuko NAITO

東京女子大学卒業後、アナウンサーとしてNHK入局。『ニュース7』「首都圏ネットワーク」のキャスター、『あさイチ』リポーター、大河ドラマ『篤姫』の紀行ナレーションなどを担当。著書に『内藤裕子のカレー一直線!!』(池田書店)。カレー大学院卒業後、"カレーアナ"としてカレー愛に溢れた日々を送る。

Instagram @yukonaito713

03 Kazuko HAYASAKA

美と健康と幸福を探求し、
森暮らしを実践する植物療法士

早坂香須子

人生に2度の大ジャンプ。迷うより、
飛び込んでみたら新しい世界が見えた

看護師時代に夜勤だった時のこと。夜中に足をさすってというナースコールが、とある患者さんからありました。新米だった私は足をさすりながらも、やらなきゃいけない膨大な仕事のことで頭の中が大渋滞で、その方に向き合っていなかった。するとすぐに「〇〇さんに代わってくれ」と。先輩が患者さんの目を見ながら丁寧にさすっていたこと、そして、その方が数時間後に亡くなったことに衝撃を受けました。自分のような人間が看護師をしてはいけないと……。

結局、3年が経ち、経験を積んでもその思いが離れず、退職してメイクアップアーティストを志すことに。メイク中に人の肌に触れているうちに、メイクも看護の仕事も、肌を通して人間の繊細な心と向き合うことなのだと気づかされました。180度違う職業に転身したね、とよく言われますが、看護師時代に刻んだ後悔があったからこそ、人の肌に触れることに真摯に向き合ってこられたのだと思います。

そして昨年、東京から長野へ移住するという大転機が。家を建てる決断、仕事はどうするのかという迷い。けれど、移住に惹かれた自分に忠実になったことで、絵の仕事が始まったり、本を出すことになったり。今、迷いを上回る変化が起こり始めています。

Kazuko HAYASAKA

メイクアップアーティスト、植物療法士。長野県にある森林との出会いから、森の再生をしながら自然の中で生きることを選ぶ。同時にKAZTERRAMORI名義で作家活動を開始。2024年10月には、文筆家・服部みれい氏と共著である詩画集「わたしの中にも朝焼けはある」(河出書房新社)を上梓。

Instagram @kazukovalentine

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さまざまな分野で活躍する目利きたちによるコラム【目利きが選ぶアレやコレ】。今回は目利きたちの“人生のターニングポイント”をご紹介。